儚く、甘く、…繋ぐ。【5】［Reo.S］

守りたいもの 6 ページ36

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『玲於、いよいよツアー？』


「うん。今年は海外回ってから、国内。
毎年グループでツアーやらせてもらえるって、
改めて考えるとさ、有り難いよな、マジで。」



玲於の声は一気に張りを持つ…、それだけで

今がどれ程充実しているのかが伝わって来る。


『…隣の席の佐野くんがスターになってく姿を
GENERATIONS誕生前から側で見てるってさ、
本当に自分の事なのかな…。贅沢だね、私。』


「A？何言ってんの？
…人生振り返ってますみたいなの、やめろ。
ほら、いい加減に顔見せろって。」


『ダメだよ…っや…』


肩を揺らしても横を向こうとしても動かず

首元に顔を隠し続ける私を、玲於はさすがに

変に思ったらしく、少し強引に私に被さった。



「…ほらやっぱり。泣いてんじゃんかよ。」

『あくびだよ…』


「はいはい。あくびで出る量じゃないから。
…何？何か、引っ掛かっちゃったんでしょ？」

『……。』


…言えない、今さら。

そもそも今、彼女じゃないし。


他の女の子の存在が嫌なんて、今さらだよ…

今までずっと理解あるフリしてきてるのに。

自分の為に玲於にそうさせたのは、…私だし。


…今さらだよ。



「…言って欲しい、A。」



優しく話す玲於は、今でもきっと変わらず、

心では私を一番に大切に想ってくれている。


でも、仕事も、私も、それ以外も…


玲於は成長して、

…器用にこなせるようになったんだよね。




『…会えて嬉しい、本当に会いたかった。』




"…自分が選んだ今の関係が辛くて
もう心が押し潰されそうで苦しいんだよ…"


本当の気持ちを上手にオブラートに包んで、

私は玲於にキスをねだる。


「…もうアレが無いから誘惑しないで…」


『さっきは出来るって言ったのに、…嘘つき。
いいよ、じゃあ、もう二度としない…』

「無理無理無理無理っ！」



…あの夏の日、幼いままで受け入れた時から

繋ぐと不安が打ち消せた。


玲於でいっぱいになって本当の私になる感じ…


ただ、大人になった私は

その度に愛しさが募ってしまうようになった。



はにかんで笑う玲於が私に優しく触れていく。


たくさんキスをくれるから、

私も、…もっとたくさん玲於にキスをする。




昇りつめる時、少しだけ意地悪をした。




幸と辛、よく似てる意味が


この日の私は分かった気がした。



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