儚く、甘く、…繋ぐ。【5】［Reo.S］

彼の世界 1 ページ1

愛『…A、ココ！』


暗くなった会場内、

少し遅れて席へ向かった。



大きなスクリーンには、彼らが怪盗に扮した

鮮やかな映像が流れている。



『…あぁ、何とか間に合ったかな。』


愛『うん！…初めてだよね、A。
多分すごく驚くよ、…楽しもうっ！』


『…うん！』


.

.


＿ここは、代々木第一体育館。2日目。

.

.


本当は、今夜も何かの撮影が入っていた。

雑誌か、タウン誌か、どっちかだったかな…。



だけど、どうしても今日、来たかった。



…自分への誕生日プレゼントとして。




『…明日、オフにして欲しい。』


母『A…、そんなに無理そうなの？』



『また、倒れちゃったりする前にさ…。
一日貰えば、また頑張るからさ…。お願い。』



…この日に照準を合わせて準備した。


元気なのにご飯も我慢して、…辛かった…。


でもその甲斐あって、ちょっとした

メイクだけで病人風に仕上がった。



少し前から体調不良の振りを母に見せていた。


玲於と会えない事が私の精神面に

影響を与える事を、以前も倒れた前科がある分

母はよく分かっている。



『…誕生日、だしね…、特別ね。』


渋りながらも別日に日程を調整してくれた。



そして、母はもちろん私に付き添おうとした。


でも、…今は必殺の一言がある。


『もし、風邪とかインフルエンザとかだったら
赤ちゃんに感染しちゃったら駄目だから！』



そう言うと、渋る母も大人しく帰って行った。



うん…。 本当に懲りないって言うか、

…母は現在妊娠中。


はっきり言わないけど、２、３か月前から

兄と暮らしているようだ。



この歳で姉になるとは思わなかった。


けどそのお陰で、母はようやく私の気持ちを

受け止めてくれるようになった。



次第に、私からの執着を解いてくれた。



以前は仕事に穴を開けるなんて許さなかった。


最近は私の考えにも理解を示してくれるように

なってきて、仕事の事も意見を聞いてくれる。


緩くなった、のかな…。


簡単に騙されてくれちゃったし…。



私の親離れも近い、って事かもしれない。

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