FGO/GreenSparkle 3

休憩:2 ページ26

「私しかいないわよ」

笑うでも、憐れむでもない。
事実だけを知らせる言葉は、いとも簡単に少女の強がりを崩す。溜めていた大粒の涙をボロボロと流し始めた立香が、ごめんとわけもなく口にする


「どうして謝るの」

立「だって…っ」


迷惑をかけている。そう言おうと思った私を先回りして、かぐちゃんが「迷惑じゃないし、困ってない」と言ってくれる
そして、私が言うのを…ただ待ってくれている。それは、今の私にはこれ以上ない慰めだった


立「かぐちゃんは…怖く、ないの…っ？」

「…恐怖はある。でも、私は死ぬことは怖くないの」

立「…私はっ、怖くて」


たまに、立ち上がれなくなりそうになる。体も心も追いつかなくて、マシュが自分を守ろうと盾を持つ背中を見てばかりだ
自分が弱いのが、たまに…いや結構、しんどくなる。私じゃない誰かだったらもっと上手くやれると思ってしまう。死ぬのも嫌だ


「…怖くていい。怖いと思う貴女は正しいのよ、立香。貴女とマシュは普通の女の子なんだから」


怖いと思うことは子供だからでも未熟だからでもないのだと言う


「人間はみんな怖いと思うものよ。傷も、死も…恐れる事を辞めないで。泣いたって、震えたって良い」

(それでもきっと、貴女は立ち続けるから)

立「でも…」

「大丈夫。私がいる」


また大粒の雫が落ちる。どこまでも穏やかで、でも強い言葉…自然と足が動いて立ち上がる
部屋に来てから初めて目を丸くしたかぐちゃん。床に膝をついて、かぐちゃんの膝に顔を寄せると少しだけ動揺したのが分かった…でも何も言わずに、突っぱねずに、頭を撫でてくれる


立「…ッ甘えていい…？」

「いいよ」

立「マシュには内緒にして」

「うん」

立「私に…できるかな…？」

「立香」


世界を救おうなんて大層な事を考えなくて良いのよ。
ただ、明日のために生きて。
叶えたい未来のことを考えて。
世界を救うために生き残るんじゃない。
貴女が生きようと踏み出す一歩が、未来になるの。


＿降ってくる言葉一つ一つに、温度がある。膝が濡れても、かぐちゃんは優しかった

私が落ち着いたあと、私達はベッドに並んで座った。甘えるようにピタリと腕に身を預けて…ずっと聞きたかったことを、訊ねた
黒ジャンヌが言っていた事の正否を


「…彼女の言った通り。私は人殺し 貴女と同じ歳の頃に…許せないと憎んだ魔術師達を殺したの」


だから信用し過ぎちゃ駄目だと言うかぐちゃんが、部屋に来て初めて、笑う気配がした…

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