忠誠:3 ページ3
「武士ならまだしもね」
モ「…………そうだよな。オレはなにを…」
「でも」
自嘲するように眉を下げて苦笑したモードレッドの落胆に声を被せると、逸らされた目がまたこちらを向いた
その顔に向き合って、神楽坂は気を緩めるように笑った
「…モードレッドが“そうなる”と言うのなら、私はそう信じるよ」
モ「…!」
「例えあなたがこの先ほんの一瞬挫折したり、自分を疑う時があっても……私は疑わない。あなたはきっと、あなたが望む騎士になる」
その為に、自分にできることがもしあるのなら…私はそれを成そう。私の剣になることを良しとしてくれたあなたの為に
誓いを立てるような激励に、モードレッドはどこかホッとしているようにも見えた
モ「…そうか。お前は、そういう奴なんだな」
モードレッドは軽く眉を寄せつつも笑みを浮かべた。戦場においては魔術師らしい冷酷さがあり、しかして先を走る少女の為に穏やかであろうとする
魔術師でありながら英霊にお節介を焼くようでいて、その実自分と他人の境界を明確にし、その上でオレたちを信じている。英霊という存在を、それが応えてこの場にいるという事実を信じて
こいつはオレ達に礼を尽くし、この剣に己の運命を委ねるのだ
器用なのか、それともサーヴァントを使い魔と割り切れない不器用なのか
モ「マスター、お前さんの願いはなんだ」
「え?」
モ「何を願って、マスターに……聖杯戦争に関わったんだ」
今なら聞ける気がした。聞かせてくれる気がしたんだ
星空の淡い灯りで海の青が、少しだけ驚いたように波を立てた…少し黙って、それが口を開くのが分かった
「……復讐が、したかったの」
波音があれば消えるような、声だった
続いてその過去を語る声は、憎悪なんて微塵も感じねえような穏やかなもんだった
幼い頃に、魔術をかじっていた両親がとある聖杯戦争で魔術師に殺されたこと。そして、そいつらは時を経て、同じことを繰り返そうとしていたこと
マスターはそれを知って、そいつらを殺そうと決めたこと。己の力だけでは成せないと分かって、異端の道を選んだこと
「そんな私に応えてくれたのが、ロビンだった」
まさに奇跡と呼べる歪みだったという。
「この手で人を殺した。自分の意思で…そして私は復讐を果たして、生き残った」
モ「その先には、何があった」
「何もなかった。汚れた手と面倒と、日常だけが残った……でも、隣には共犯者がいてくれた。ずっと…そばにいてくれた」
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作者名:アクエリアス | 作成日時:2023年11月14日 12時