Fate /GreenBloody III

泡沫:4 ページ20

家に戻った後は、互いにそれらしい会話もなく…ロビンは部屋の一つに篭っていった

ベランダの手すりに座って耽っていると風が私の髪を弄ぶ……もうすぐ、夜だ
遠くに沈もうとする太陽の姿をじっと見つめた


ロ「そんな所に座ってると落っこちますよ」


「そんなヘマしないよ」


ロ「マスター」


「ん？」


ロ「手出して下さい」


手？と聞き返しながら手のひらを差し出すと、ロビンの拳が私の手の上に乗せられる

ロビンが握った手を解いて下ろすと、私の手には何かの感触が残った


「……これ」


自分の手の中にあるソレを見つめる……夜の光を僅かに反射するそれはリング状の…


「…指輪…？」


ロ「例のガラクタ屋で加工出来そうなのを見つけたんで…まぁ」


「…え、作ったの？」


一ヶ所だけ、石のはめ込まれた指輪…シンプルな作りだ


ロ「御守り代わりってトコですわ…残念ながらそれらしい効力は何にも無いんですけどね
ま、気休め程度にはなるでしょう？」


緑色の石…君の瞳と同じ色……君の色だ


「ありがとう…大事にするよ。ね、付けてくれない？」


ロ「良いですよ」


リングをロビンに返すと、ロビンがリングを持っていない方の手を差し出す


ロ「指輪ははめる指によって意味が違うらしいですけど、どの指にします？」


自分の指を見つめ、考える…


「じゃあ……右手の中指に」


ロ「右の中指…邪気を払い意思を強める、ねぇ。確かにぴったりだ」


そう言いながら私の右手を取り、中指に指輪を滑らせる


「でも、なんで指輪？」


ロ「別になんでも良かったんですけどね、手頃に加工できそうなのがソレだったってだけですよ」


「…まぁ、願掛けには丁度良いかもね。これでもう揺らがない」


ロ「揺らぎそうだったんです？」


「まさか」


大きく息を吸う……あぁ、夜が来る。独りではないのだと、分かっている…けれど最早生理的とも言える不安が胸を騒つかせる

落ち着けるように、不安を吐き出すように息を吐いた


「……あのね、ロビン…」


ロ「はい？」


考えるより先に溢れた声を、ロビンが拾う…


「……」


ロ「何です？」


柔らかな声音で私の言葉を待つ…言ってしまおうか


「私……最初、君を喚ぶ心算なんて無かった」


ロ「はい…？」


「…前にも言ったでしょ。サーヴァントを喚ぶ心算なんてなかったって」


ロ「…それで？」


「あの時言った事、あれも本音だけどね………あれは、私にとって"全てを諦める為の儀式"だった」

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