歌い手系カフェ店員と声優さん

32杯 ページ33

無事にリハが終わった

2時間でゼーゼーハーハーしてしまった

リハもあと2回

こんな調子で大丈夫だろうか



ライブまで約一ヶ月
正確には3週間


気合い入れてメニューをこなしていかないと


なんて考えているけど、、、少し、


いや、


だいぶ気になることがある



ｺﾂｺﾂｺﾂｺﾂ

ｺﾂｺﾂｺﾂｺﾂ


私の足音ともう1つ足音がある


この足音リハをしていたスタジオから出て
ずっとこの調子なのだ、私が止まれば相手も止まる

早歩きをすると相手も同じペースでついてくる


どんどん足音の距離が近くなっている

どうしよどうしよ

こわい

焦りが出てきて

視界がうっすらぼやける


下を向きただただ早歩きをする

なんとか撒かないと、家が特定されちゃ笑えない


どんどん近づいてくる足音

視界がどんどんぼやけてくる




足音もそれに伴い近づいてくる


2m

1.5m


もう終わりだと諦めた瞬間

遠くから誰かが走ってくる軽い音が聞こえ

横を通り過ぎると思ったら

ﾄﾝﾄﾝ

肩を叩かれた


怖くて後ろを向けずにいると

今日も聞いた声が降ってきた

「A？だよね？ねぇ？大丈夫？？」

ゆっくりと振り返ると

『た、拓也さん！！！』

そう、高身長の彼がいたのだ

安心して目に薄い幕を張っていた涙がこぼれそうになる

ストーカーは高身長の拓也さんにビビったのか
私の横を走り去っていった

『あの、あの、スタジオからずっと
知らない人に付けられてて、あの、それで、、』


心臓がバクバクして言葉がまとまらない

「いいよいいよ、大丈夫、俺もなんとなく察した

ねぇ、これから暇？」

『？？はい』


「明日は？」

『カフェが休みなので暇です』

「じゃあさ、Aが良いならこれから飲みに行かない？他の人もいるんだけど…」

『いや、私がいたら邪魔になっちゃいますよ！せっかく皆さんで集まってるのに』


「大丈夫大丈夫みんな優しいし、この状況で
Aをひとりで帰すほどバカじゃないよ？」

たしかにちょっと怖いかも

どうしよう

私が必死に答えを出そうと考えていると

「安元さん？オレです、いや、オレオレ詐欺じゃなくて江口です！

知り合いの女の子連れてっていいですか？

大丈夫！危ない子じゃないですよ！すみません！あざます！」

『拓也さん？』

「許可おりた！行こ？」

正直一人で帰れるほど
私の肝は座ってなかったので助かった

『すみません、ありがとうございます』

「いいのいいの！ここからそう遠くないんだ」

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