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電話を切って改めてマークに向き直る。
「どうだった？」
「大丈夫だったよ」
「！そうか…」
また少しの間だけ沈黙が訪れる。
今度は気恥ずかしさからくるもので、お互い何となく目が合わせられない。
「じゃあ…行こうか」
「う、うん…」
差し出された手におずおずと手を重ねた。
彼もまたほんの少しだけぎこちなく握ってくれて。
手って、不思議だな…
相手の感情が直に伝わってくるんだから。
マークの今の気持ちは…私と同じ。
彼に手を引かれながら宿の中に入る。
「他のやつに見つかったら厄介だからな…悪いが、隠れながら俺の部屋まで行こう」
「わ、分かった」
何だか映画に出てくるスパイみたいだ。
周りに人が居ないかを念入りに確認してから、一気に彼の部屋まで走り抜ける。
それが可笑しくて、楽しくて…私は思わず笑ってしまった。
無事に彼の部屋に着くと、二人して安堵のため息をつく。
「ふぅ…何とか辿り着けたな」
「ふふっ、映画みたいでちょっと楽しかったよ」
さっきまで険しい顔をしていたマークも、緊張が解けたのかやっと笑ってくれた。
やっぱり可笑しくて二人して笑い合う。
こんな体験、めったに出来ないだろうな…
「…あ。そういえばシャワー浴びないとだよな」
「ああ…！」
彼に言われるまで忘れていた。
この宿は仕切りのついたシャワールームらしく、ユニコーンは男の子しかいないため、私がバレないよう利用するのはかなり難易度がいる。
もしシャワールーム内で誰かと鉢合わせしようものなら…とんでもない事態になるのは容易に想像がいく。
「この時間だとまだ誰か使ってそうだな…もう少し時間をずらした方がいいかもしれない」
「そうだね…あ、ならマークが先に入ってきなよ」
「だが…」
「マーク？戻って来てるのか？」
コンコン、というノックの後に聞こえてきた声。
紛れもなくディラン君の声だ。
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作者名：結川 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/17663132
作成日時：2021年8月23日 16時
