君と繋いだ手の先へ part2【イナイレ】 (ページ28)

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第九章　君に触れてページ28

「…眠れない……」

閉じていた目を開けて出た言葉。
自分一人だけしかいない部屋で呟く声はやけに大きく聞こえる気がする。

明日はついにリトルギガントとの決勝戦。
持てる力の全てを出し切って臨む事になる総力戦になるだろう。
選手のみんなが万全の状態で挑めるように、マネージャーである私も明日に備えて早めに床に就いたのはいいのだけれど…

さっき呟いた言葉通りに眠る事が出来ないでいた。

決勝戦という最後の大舞台が待っていると思うと、興奮や不安が入り混じった複雑な気持ちがどうしても胸を騒つかせる。
遠足の前日の夜に眠れないのと似たような感覚かもしれない。
この歳にもなって…とは思うけれど。

「…マーク……」

こんな時、真っ先に頭の中で浮かぶのは愛おしい彼の顔。
無意識の内に携帯へと目が向けられる。

時刻はもうすぐ22時を回る頃。
前にフィディオとの事で連絡した時も夜遅かったのを思い出す。
さすがに何度も夜遅くに電話をするのは嫌がられるかな…

勢いで電話帳を開きかけた指を止めて、今度はメール画面を開いていた。
宛先はもちろんマーク。

「“夜遅くにごめんなさい。もし迷惑でなければ今から会えませんか？”…送信、と……」

メールの送信完了画面を目にした後、携帯をパタリと閉じる。
もし眠っていて返信が返ってこなかったら…その時はその時だ。
明日の試合を観に行くと言っていたから、そうなったら会った時に謝ろう。

期待と諦め半分のままそっと目を閉じた時。

「！返信が…」

手の中で感じた振動は確かにメールを受信した時のもの。
このタイミングなら、相手はほぼ確実に…

咄嗟に起き上がれば携帯を開いて画面を確認する。
思った通りでマークからの返信だった。
そのままメールを開けば、“分かった。今からそっちに行くよ”とだけ書かれていて。
少しの間だけ画面から目が離せなかったけれど、寝巻きのままだった事を思い出し、慌ててジャージを引っ張り出して着替えた。