第八章 一夜の夢 ページ21
「寝過ごした〜っ！！」
私達を乗せたイナズマキャラバンは猛スピードで走っていた。
今日はフィディオ達オルフェウスの決勝トーナメントが行われる日だからだ。
「何で起こしてくれなかったんだ！」
「起こしました…何度も何度も何度も起こしたけど、だーれも起きなかったんです！」
秋ちゃんが珍しく大きな声で反論する。
彼女の言う通り、私達マネージャーが選手達の部屋を回り色んな手段で起こそうと試みたけれど、誰一人として起きなかったのだ。
前日の決勝トーナメントを勝ち進んだイナズマジャパン。
ガルシルドから解放されたザ・キングダムとの試合は想像以上に激しく、楽しそうだった。
両者心からサッカーを楽しむという気持ちで挑んだからこそ、熱い戦いが出来たんだと思う。
その反動で疲れも溜まって寝過ごしてしまうのは…まあ無理もないか……
そして目的地であるスタジアムに到着し、急いで観客席の方へと走る。
「なっ…！？」
試合会場の得点掲示板を見て誰もが言葉を失った。
そこに表示されていたのは8-0の数字。
得点の入っていないチームは…オルフェウス。
その瞬間に試合終了のホイッスルが鳴り響く。
よく見たらフィディオ達オルフェウスのメンバーはみんなボロボロだった。
円堂君達もこの結果に驚きを隠せていない。
「みんな、先に帰っててくれ！」
円堂君は一人でこの場から飛び出すと、フィディオの所に向かって行った。
取り残された私達は円堂君の言う通り先に宿へ帰る事に。
あのフィディオ達が一点も取れる事なく負けるなんて…
今でも信じられない気持ちでいっぱいだ。
何よりフィディオの心が一番気がかりでならない。
本当は私も彼に会いに行った方が良かったのかな……
…ううん、円堂君が駆けつけてくれたんだから大丈夫だよね…
それからというもの、今日は本当に色々な事が起きた。
夏未さんがリトルギガントのチームオペレーターになった事、チームガルシルドとの試合や響監督のお見舞い…
とにかく密な一日だった。
あっという間に夜は訪れ、疲れた体を休ませるようにベッドに腰を下ろす。
「今日は大変な一日だったな……」
ため息をひとつ吐いた時、ポケットの中でブルブルと震える感覚が。
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作者名：結川 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/17663132
作成日時：2021年8月23日 16時
