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「…そろそろ寝るか？」
「そ、そう…だね」
夜ももう遅いため、後は明日に備えて寝るだけ。
私はそのまま床に横になろうとしたら、マークが慌てて止めてきた。
「おっおい、床で寝るなよ。お前はベッドで寝てくれ」
「ええ？そんな事出来ないよ！マークの部屋なんだから、マークがベッド使うべきだよ」
「好きな女を床で寝させられる訳ないだろ」
私達はどちらも譲れなかった。
このままでは埒があかない…
そう思った時だった。
「…なら……ベッドで一緒に寝るか？」
最終的に行き着くのはやはりそこらしい。
この提案を拒めば、また終わる事のない譲り合いが始まってしまうだろう。
だから…私は少しの沈黙の後、ゆっくりと頷いた。
先に私をベッドに入らせてくれて、その後にマークも入ってくる。
お互い何となく背中を向ける形で横になった。
「電気…消すぞ」
「うん…」
明かりが消えれば、室内には窓から差し込む月の光だけが輝いていた。
「…さっき、ディランと何喋ってたんだ？」
背中を向けたまま彼がそう聞いてくる。
「明日には帰らなくちゃいけないから、寂しいねーって話してたよ」
「やっぱり…Aも寂しいのか？」
その問いに思わず振り向きかけた。
A“も”…それって、マークも同じ気持ちって事だよね…？
私と離れる事に少しでも寂しいって…思ってくれてると受け取ってもいいのかな。
「それは…寂しいに決まってるよ。この島には大切な思い出がたくさんあるから…」
目を閉じて、この島に来てから今までの出来事を思い返してみる。
念願の世界大会に来て、世界各国の様々な選手に巡り会えた。
その中でも一番大切な出会いは…マークとの出会い。
彼との出会いによって、私の世界は一気に広がっていったんだ。
恋をする事の楽しさや切なさを教えてくれた。
私の手を取って前を歩いてくれる彼の背中は、本当に頼もしくて。
これからはもう、そんな幸せな時間が訪れないんだと思うと……
「あ、れ…」
気付いた時には一筋の涙が頬を伝って、ベッドのシーツを濡らしていた。
落ちた雫はあっという間に黒いシミに変わる。
嫌だ…本当は離れたくなんかない。
今までみたいに会いたいと思ったら会える距離に居たい。
マークの隣に…ずっと……
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作者名：結川 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/17663132
作成日時：2021年8月23日 16時
