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そして両チームがフィールドで向かい合う。
それぞれポジションについたところで、試合開始のホイッスルが鳴り響いた。
ユニコーンのキックオフから始まり、一気に一之瀬君が攻め上がっていく。
最後に彼のプレーを見た時よりも格段に成長しているのがすぐに分かった。
次々にこちら側の選手を追い抜いていき、あっという間に円堂君の目の前へ。
「ペガサスショット！」
真っ白なペガサスと共にボールが一直線にゴールへと飛んでいく。
それを円堂君はイジゲンザハンドで止めようとするも破られてしまい、早くもユニコーンが先制してしまった。
「一之瀬君…」
秋ちゃんが膝の上で手を握るのを見て、私は少しでも気持ちが落ち着いてくれればいいと思いながら、その上にそっと自分の手を重ね合わせた。
彼女が私に目を向けてきたから、私はただ微笑み返すだけ。
その事に強張っていた表情も少しだけ柔らかくなってくれた気がした。
それから激しい攻防戦が繰り返されながらも、風丸君と吹雪君の必殺技が決まり、こちらも一点を取ったところで前半戦が終了。
ハーフタイムに入りみんなにタオルとドリンクを配り終えた時、秋ちゃんが私に言ってきた。
「私、もう一度一之瀬君のところに行って来る」
「うん…分かった」
そう言ってスタジアムの裏側に歩いていく彼女を黙って見送った。
「あれ？木野先輩、どちらに行かれるんですか？」
秋ちゃんが歩いて行った後を見ながら春奈ちゃんが聞いてきたため、少しだけ戸惑ってしまう。
本当の理由を私から話す訳にはいかない…
「ええと…お手洗いに行くって言ってたよ」
「ああ、そうでしたか。それよりA先輩、大丈夫ですか？」
突然心配されてその原因が思いつかない。
「え？何が…？」
「もう前半戦も終わって今更ですけど、ユニコーンのキャプテンさんとお付き合いされてるじゃないですか。複雑な気持ちなんじゃないかなって…」
そう言われた事でやっと納得がいった。
「うん…試合が始まる直前まではそうだったね。でも、今は平気なの」
「そう、なんですか？」
「どんな結果になっても、最後まで見守るって決めたから」
マークが覚悟を見せてくれたから、私も同じ気持ちでこの試合に臨める。
それに…試合前に私の手を握ってくれたあの温もりが、私をより落ち着かせてくれたんだ。
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作者名：結川 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/17663132
作成日時：2021年8月20日 7時
