恨み ページ8
さて、と。
パトカーに乗って行ってしまった警官二人を見送り、足元の人間に目を向ける。
「もういいよ」
「っか…はぁ…お前、俺を殺す気か」
「いやぁ?でも、あいつらに見つからないようにするにはこうするしかなかったからね」
口元と鼻のガムテープを外し、男はいてぇと言った。自分でも、よくまぁ警察が来てからの数重病の間で手足を縛り、口と鼻をガムテープで縛ることができたと思う。
こうでもしなければ、あの警察の目や鼻を欺けなかっただろうし。特に私の隣人のほう。
「それで、契約はしてくれるんだろうな」
「あぁ、もういいよ。契約してあげる」
さっき渡しておいた紙には、男の名前が記されていた。別に契約してあげる、と言ったもののこの紙に名前を書いた時点で契約は成立してるようなもんなんだけどね。
「もう一度あんたの願いを聞かせな」
「ボスを殺してほしい」
「契約成立」
男の瞳孔が開く様子が鮮明に見える。同時に首を両手で覆い掻き毟る。そんなことしたってどうにもならないのに。
簡単に殺してほしい、なんて言うからそんな目にあうんだ。一つの命の重みを知りやがれ。
なーんて、私が一番言っちゃいけないんだろうけどね。でも、残念なことに私はそういうものを商売にしてるから許してね。それにただ人間の命を奪ってるわけじゃないし。
「はい、あんたの組織のボスは今死にました。ついでにあんたの姉も今死にました」
組織のボスの残りの寿命が約20年に対して、この男の寿命が残り約3年ときたもんだ。そんなの等価交換になるわけがないだろう。
だから平等に、男の姉の寿命である17年を奪った。そしたら、丁度この姉の残りの寿命が17年でピタリ賞になってしまった。でも、私は悪くないんだけどね。
「恨むならその願いを私に持ってきた自分を恨んでね」
こっちは商売なんだから。ファストフードのスマイル感覚でやってもらえると思ったら大間違いだ。
「いずれにせよ、等価交換成立だ」
今日は長く営業しすぎた。もう帰って寝ないと明日もまた花屋の売り子をしなきゃ。寝坊なんてしたら店長に減給されちゃう。
「こんなものももういらないしね」
さっき緑髪の警官…えおえおから貰った名刺をライターで炙ると呆気なく燃えて灰になった。
灰は床の肉の塊に降り注ぎ、ちょっと美味しそう…なーんてね。
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作者名:零紅 | 作成日時:2017年7月16日 0時