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閑散とした夕暮れを背景に、2人きりの観覧車。薄く微笑みながら司に向かってAは淡々とした声音で、しかしウットリとした色を滲ませてそう語った。
司は、Aの芝居への執着を黙って聞いていた。恐らく自分は彼女が言っていることを半分も理解できなかっただろうけど。
Aは微笑んだまま口を噤む。その微笑みは、あまりにも特徴がなくて凡庸としていた。今日何度も見惚れた筈の綺麗な笑顔のはずなのに、司はその笑顔に何とも思えなかった。彼女を形容する一切が死んだような退屈で空虚な、目玉の中に自分の顔が映るだけの硝子みたいだった。
それを感じた途端、ゾワッと悪寒が立った。彼女の巨大な異才を目の当たりにしたような気分になった。
A、と喉から掠れた声が出る。ガ、と司の脚にAの足が絡んできて、彼女の方に引き寄せられた。
「天馬司、
貴方は、私を理解してくれる？」
と、硝子の人型が呟いた。
次の瞬間、司の唇は喰らうように奪われる。
は、と頭の中が真っ白になった。唇に当たる柔らかな肉の感触と、人の熱に司の鼓動はドッッッと早くなる。妹の笑顔とショーしか頭になかった司にとってこれは紛れもないファーストキスだった。
顔が真っ青になったり、真っ赤になったりするのがわかる。真っ先に思いつかんだのが咲希とえむの顔だったからだ。妹の憧れの人と、仲間の友人と、不健全行為！！！！！！！！！！！と心の中でデッカイ声で叫んだ。
唇は案外早く離れる。司はぷぱっ、と空気を肺に入れてから文句の1つでも言ってやろうと真っ赤な顔で、自分から離れたAの顔をバッと見る。
しかし思い浮かんだ文句は、どれも司の口から発されることはなかった。
目の前に映った彼女の顔が、自分の顔に見えた気がして。
司は「え」と思って思わずゴシゴシ自分の目を擦った。再びAを見ると、彼女は興味深そうに親指で唇をムニッと触ってから、強気な顔で笑った。
今までのAからは考えつかない表情で、やっぱりどこか、その表情は自分に似ている。
「今日は本当に助かった。ありがとう」
と、AAの形をした自分が笑ったような気がした。
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志吾(プロフ) - 青いGさん» コメントありがとうございます！そう言って貰えるととても励まされます……！本日続編を作成致しましたので、よろしければまた閲覧してくださると嬉しいです (2022年9月4日 19時) (
レス) id: 5e4235e860 (このIDを非表示/違反報告)
青いG(プロフ) - ひえぇぇぇぇぇ...めっちゃ面白かったです！時間忘れて一気見してしまいました...言葉の選び方とストーリーの構成とか設定がもう私の好みすぎて、最初から最後まで画面の張り付いて見てました...笑、続編あるのかな...？一応続編くるまで待機します！頑張ってください！ (2022年8月8日 20時) (レス) @page45 id: 6cae6639c8 (このIDを非表示/違反報告)
志吾(プロフ) - 木由さん» 素敵なコメントありがとうございます！公式から提示された天馬司を汲み取って、公式に沿った彼は勿論、読んでくださる皆様にもっと天馬司を好きになって欲しい！と言う想いで解釈した天馬司なので、その言葉が一番欲しかったです。これからも宜しくお願い致します (2022年4月12日 21時) (レス) @page35 id: 5e4235e860 (このIDを非表示/違反報告)
木由(プロフ) - 文章が堅すぎず丁度よくて大好きです。貴方様の書く司くんがもう解釈一致すぎて……お話の中で司くんの育ちの良いところが存分に出されててずっとニヤけながら読ませていただいてました……！無理のない範囲で、これからも頑張ってください……！ (2022年4月1日 20時) (レス) @page31 id: 952fea1b3e (このIDを非表示/違反報告)
志吾(プロフ) - Duskさん» ありがとうございます、ご期待に添えるように精一杯頑張りますのでどうか追ってやって下さい… (2022年2月20日 0時) (レス) id: 5e4235e860 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志吾 | 作成日時：2022年1月18日 23時
