ツキノヨニ (ページ5)

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6時限目の始まりを知らせるチャイムが鳴っても海人は生物室に現れなかった。心配するAだが、タイミング良く睡魔に襲われて最前列の席であるにも関わらず机に突っ伏して寝ようとした。

「おいA、寝るならせめて誤魔化すとかなんかしろよ……」

「……あ、はい」

級友に笑われたAはうとうとしながら頬杖をつく。生物担当が緩くて良かった。

「成績下げられたくないんなら起きとけよー」

寝ている生徒を厳しく指摘することはないが、ちゃっかり成績は下げられるらしい。成績の善し悪しが自分次第なところはありがたいが。

Aが次に目を覚ましたのは授業終了の5分前だった。当然授業中の記憶も無く爆睡していたのでなんとなくスッキリする。

(あれ、海人くんほんとにどこ行ったんだろ)

見渡すとまだ海人は生物室にいないようなのだが、それよりも驚いたのは板書が自分のノートにきちんと書き留められていることだった。

「私の分のノートとってくれたの？」

Aは隣に座る級友に問うたが、その答えはなんとも不思議なものだった。

「え？なんかA急に起きて真面目にノート書いてたよ。先生の質問にも答えてたし」

「えっ」

「それで2、3分くらい前かな、また寝た」

「……そっか」

級友の話にAは目を丸くした。再度ノートを確認すると字面は完全に自分のものだ。本当に覚えていないだけなのだろうか。

残りの時間ノートを眺めていると、ページの端に短いメモ書きを見つけた。

"お前の運命も災難になってしまったな"