ツキノヨニ (ページ23)

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話は勇太が去った後の倉庫に戻る。

「ねえ、もうAちゃんが、Aちゃんが可哀想。そんな話なら後で俺たちだけでゆっくり話そうよ。帰らせてあげて」

見たことのないAの表情に海人はいたたまれなくなり、早く終わりにしてほしくなった。言い合いをする紫耀と廉かあまりにも醜い。

「……まあ今日はええわ。国がどうなったって女王様が戻れば元通りやしな」

「てめえまたそんなこと言いやがって……」

「うるさいっ！」

何故そこまで互いの意思を譲らないのか。妥協しないのか。発言を我慢することができないのか。

「Aちゃん、俺が送るから。ほんとにごめんなさい」

愕然とする2人に見向きもせず、海人は何も喋らなくなったAの体を支えながら倉庫を出た。

(2人共、Aちゃんのこと考えてないじゃん。ひどいよ)

その後の倉庫がどんな状況だったかはわからない。そんなのはどうでもよかった。

家までAを送っている最中もAは声を発さなかった。玄関に着いたときにありがとうと弱々しく言っただけである。

精神的に大きな衝撃が続き、果たしてAは明日学校に来てくれるだろうか。自害を図ってしまうかもしれない。

(明日なんて声掛ければいいんだろ……)

Aとは真反対に海人は憂鬱でしかなかった。