ツキノヨニ (ページ17)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:23,631 hit

15 ページ17

じゃれ合う3人は明らかに自分たちのものではない声が聞こえ、その拍子にピタッと話すのをやめた。

3人同時に勢い良く振り返る。

「A！？」

驚きのあまり声が出なかった勇太と玄樹に変わって、優太は一際大きな声を上げた。

「馬鹿者、妾だ。見てるがよい」

3人の前に突然現れたAが天を仰ぐと、晴れ渡っていた空はたちまち濁った灰色に姿を変えて大雨を降らせた。

「えっ、天気予報で雨なんか言ってなかったのに！」

勇太は着ていたブレザーを脱いで頭に被せた。雨を凌ぐ行為としては全く意味を成してない。

「当然だろう。今妾が降らせたのだからな」

3人はただただ唖然としていた。ただの偶然かもしれないが、表情や口調といいAとは全くの別人で女王を連想させる。この雨も本当にAの中の女王が降らせたのだろうか。いまいち確信が持てなかった。

「ついて来い」

まだ信じきれていない3人を見て、Aは軽々と屋根から飛び降りアパートの隣にある飲食店へ入っていった。

黙って3人も飛び降りAのもとへ行く。

「忙しいところ申し訳ないが、雨に降られてしまって。差し支えがなければ何か体を拭くものを拝借したい」

店の入口から厨房に向かってAが聞こえる程度に声を張ると、少し間を空けて老人の定員がご丁寧に4人分のタオルを持ってきた上に、雨宿りにと座敷席に案内してくれた。

優太と勇太と玄樹の3人が並んで座り、テーブルを挟んだ対面にAが座る形になった。