ツキノヨニ (ページ15)

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「紫耀めっちゃ怒ってたけど、大丈夫かな」

夕日に照らされて優太と玄樹は2人、商店街に並ぶアパートの屋根の上に座っていた。

「大丈夫なわけあるか。それよりいわげん血ーちょうだい」

「……はいはい」

玄樹は左腕の袖を捲ると、左で胡座をかく優太に腕を伸ばした。

「どうもー」

吸血鬼は種族同士で血液を共有する。そのため人間の生き血はあまり好まれない。

優太は慣れた様子で玄樹の血液を啜り終えた。

「さんきゅ。玄樹は？いる？」

「大丈夫。倉庫にいる時紫耀から貰ったし」

「そっか」

2人は自分たちまで倉庫に戻っても邪魔になりそうだな、と思って残ったのである。2人で街を徘徊するのは割と日常的なことであり、気が向くと食事に行くこともある。

吸血鬼によっては人間の食べ物を拒む者もいるようだが、2人は初めて食した時、あまりの美味さに感激してしまった。

「喧嘩とかあんまりしてほしくないんだけどね。なんでああも頑固なんだか」

誰かに頼まれたわけでもなく、玄樹が紫耀と廉の仲介をするのは彼自身仲間割れが嫌いだからである。それは6人とも共通しているが、玄樹は特にその思いが強い。

「言っちゃえば廉の方が正しいけど、紫耀の気持ちもわからなくはない。海人もそんな感じだっけ？」

「Aちゃんの話は海人からよく聞いてるよ。クラスメイトだし一番話してるんじゃないかな」

紫耀と海人はあまり女王探しという名の人殺しに積極的ではなく、女王を見つけ出さなければならないのは2人もよくわかっているが、そのための手段が気に食わないらしい。

「廉は焦りすぎなんだよ。俺もうこっちの生活の方がいいもん」

「……確かにここの方が全然平和だし、でも俺たちそれなりの位だから見つけなきゃいけないんだよ。もうちょっとゆっくりしてたいけどね」