あの子の正体【まふまふ】 (ページ5)

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無我夢中で走っていた。気がつくと家の前に着いており、私は鍵を使ってマンションのオートロックを解錠する。あいにくエレベーターは最上階で止まっていて、呼んでもすぐには来ない。

「私って……なんだったんだろう……。」

　お兄ちゃんみたいになれなくても私なりに頑張りたい。そう思っていたのに、頑張りたいのに、今の私には頑張ろうと思えない。

「……っ、私って……なんだったのっ……！」

　マンションの1階のエレベーターの前、誰が来るかもわからないところで私は思わず泣いてしまった。こんなところで、と思っても溢れる涙は止まりそうにない。

「……えっ、A！？どうしたの！？」
「お兄ちゃん……」

　泣いているところをお兄ちゃんに見られてしまった。こっそり出てきたのだから見つかったら怒られてしまうんじゃ、と脳裏によぎったがそんなことを気にしていられなかった。私はお兄ちゃんに抱きつき、泣いた。

「……とりあえず、エレベーター乗ろっか。部屋に帰ろう？」
「うん……わかった……」

　泣きじゃくる私はそうお兄ちゃんにちゃんと伝えることが出来ていただろうか。