あの子の正体【まふまふ】 (ページ4)

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私がお兄ちゃんの家で暮らすようになって1ヶ月近くが経った。私としてはそろそろ復職しようと思っていたのだがお兄ちゃんがそれを許さない。

「何年もかけて出来た傷がそんなにすぐ癒えるわけないでしょ」

　そう言われると何も返すことが出来ない。それでも私も一応成人している。自分のことくらい自分でできるんだ。私はお兄ちゃんが外出する数少ない機会を狙って久しぶりに職場に行ってみることにした。

　結論から言おう。行かなきゃ良かった。

　わたしが働いていたのはとあるお店。入るのは簡単だ。元職場に足を踏み入れた瞬間、聞こえたのは元同僚の会話の声。

「ってかさ、相川さん倒れた時はびっくりしたよね〜」
「うんうん。でもさ、面倒な雑用とか全部やってくれてたからいなくなってまじ迷惑。」
「それな！あー早く戻ってきてくれないかな〜」

　その声を聞いた瞬間、私の身体は走り出していた。今まで必死で頑張っていたのが馬鹿馬鹿しい。あの人たちは私のことをただの雑用係としてしか見ていないんだ。その事実が私の心に刺さって抜けそうにない。