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「──いの、ちゃ、ん?」
ガタリ、と物音が聞こえ、
震える声が病室に響いた。
俺はすぐさま振り返る。
そこにいたのは想像通り、大ちゃんだ。
顔面を蒼白に歪ませて。
目を大きく見開いて、
唇がぶるぶると震えている。
白い手を握りしめながら、
俺の持っているノートを凝視していた。
「大ちゃん、」
「っ、それ、見たの……」
「うん」
「…っ」
くしゃり、と泣きそうに歪む顔。
俺は一歩踏み出す。
そしたら、大ちゃんも一歩、下がった。
怯えが見える顔。
絶望したような瞳が気に入らない。
恐らく、大ちゃんは俺が軽蔑したとか、
見損なったとか、そんな勘違いをしてるんだろう。
だって俺が告白したことを
大ちゃんは知っていたから。
だからそれでもずっと告白していた俺が、
そのことについて騙していたのか、
と怒るのではないのかと。
そう思い込んでいるんだろう。
「大ちゃん」
「っ、あの、ごめん、なさ、」
もう一歩踏み出せば、身体をビクリと震わせ、
俯いたまま大ちゃんが懺悔の言葉を述べる。
朝、大ちゃんはどういう気持ちで
このノートを読んでいるんだろうか。
俺の気持ちを知って喜んでくれたのか。
そして同時に、これまでずっと
俺が昨日を忘れる大ちゃんに告白し続けていることに絶望したのか。
本当に面倒くさいな、と思う。
嫌になったらとっくにやめているし、
続けているのは単純に大ちゃんのことが好きで、
愛しているからだ。
そこのところをどうも分かっていない。
自己評価が低いのは昔からだ。
「…大ちゃん」
「っ、いの、いのちゃん、おれっ、おれは、」
怖がっている声。
震える身体。
あぁ、まったく──、全てが、愛おしい。
「───結婚しよう」
「おれは…え?」
がばっと大ちゃんが顔を上げる。
俺はその瞬間、
大ちゃんの腕を引っ張って頭を掴み、
間抜けに開いた唇にキスをした。
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べーちゃん(プロフ) - 切ない話だったけどとても素敵でした泣 いのちゃんが強いな、すごいなと思いました。そして大ちゃんが可愛かったです。ハッピーエンドって言えるかどうかわからないけど、終わりが好きでした。 (2017年10月17日 7時) (レス) id: 0bf64f6267 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - keiさん» コメントありがとうございます!始まったときから読んでいるとは…ありがとうございます!と同時に更新遅くて申し訳ない気持ちでいっぱいです(;;)そんな中最後まで着いてきて頂き、さらに何回も読んでくださるとは本当に嬉しいです…!次回作も頑張ります(´ヮ`*) (2016年12月20日 21時) (レス) id: 2cfd20ff13 (このIDを非表示/違反報告)
kei(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!小説が始まったときからこっそり読ませて頂いてました。本当に素敵なお話で感動して、ホントに完結しちゃったって感じで通知欄に更新がないのが寂しいです…。でもこれからも何回も読ませて頂きます!これからも頑張って下さい! (2016年12月20日 19時) (レス) id: adb857be1d (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - ひまわりさん» コメントありがとうございます。号泣とは…!嬉しいです;_;たまに文章変かな?と思うときがあるのですがちゃんと伝わっているみたいで安心しました(笑)次の作品も今書いている途中なので気長に待って頂けると幸いです(*^-^*) (2016年12月20日 6時) (レス) id: 2cfd20ff13 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - 乙音さん» コメントありがとうございます。なかなか更新出来なかったのですが、最後まで読んで頂き本当にありがとうございます;_;次の作品も素敵なものが出来るように頑張ります! (2016年12月20日 6時) (レス) id: 2cfd20ff13 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ま つ り。 | 作成日時:2016年9月6日 19時