百年、僕はキミに愛を捧げる (in×ar)

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何とも言えない気持ちで、


俺は大ちゃんの病室を目指していた。


薮と話をする前に、


大ちゃんが検査しているから今はいない、


という話を聞いていた。


薮と話が終わった今、


病室に大ちゃんが戻っているかと思ったのだが、


大ちゃんの姿は見えなかった。









それを残念に思いつつ、


俺は定位置になったベッド横の椅子に腰掛ける。


そしてふぅ、と息を吐いた。









たぶん、俺は大ちゃんのために、


たくさんのものを捨てるんだろう。









それは、いつかの未来で


大切になるはずだったものかもしれないし、


俺にとって重要なものだったのかもしれない。









でも、後悔は少しだってしてない。


そんな自分に


くはっ、と笑いながら視線を落とした。









ふと、机の下の僅かにはみ出ているノートを見つけた。









「……ん？」









なにこれ、


と思わずそのノートを引っ張り出す。









表紙は特に何も書いてない。


普通に授業とかで使うようなノートだ。









表面自体は傷も少なく、


そこまで古いノートには見えなかった。


けれどどこか、くたりとしていて、


何度も掴んだような痕が残っている。









それを何の気なしにぺらりと捲った。


枕の下から見つかったノート。


それがまるで隠されていただなんて、


そんなこと少しも思いもしないで。









「…え？」









これは、と。









俺はそのノートに書いてある文字を見て息を呑む。









信じられない、とすら思った。


だってこの言葉は、この文章の言葉全部、


これは、









「…俺が、大ちゃんにした、告白……？」









記憶に焼きついている、


大ちゃんの文字そのままで。


その文字が並び、


作り上げた文章は


俺の大ちゃんへと毎日続けてきた告白の言葉全てで。









覚えていないはずなのに、


全部ここに書かれている。


大ちゃんは


昨日のことを覚えていられないはずなのに。


大ちゃんには


今日のことしか残らないはずなのに。


明日になれば、


その今日のことも忘れるのに。









───なのに、俺の告白が、全部残っていた。









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