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脳を調べるという名目で、
未だ大ちゃんは入院したままだ。
もう身体に異常は何も無い。
大ちゃんも目が覚める度、
元気な身体で今にも外に出て行きたそうだ。
けれど、大ちゃんをこのまま外には出せない。
それは誰しも分かっていた。
薮はこの大ちゃんの状態を何とか出来ないかと、
普段の業務とは別に夜遅くまで研究をしている。
何度か倒れたこともあるらしい。
必死になって、
泣きそうな顔で対処法を探している。
大ちゃんの記憶は、
事故がおこった瞬間のままで止まっている。
大ちゃんにはこれからの記憶が残らない。
未来が、残らない。
…酷い話だ。
大ちゃんは子どもを助けたっていうのに、
その結果がこれか。
けど、俺のすることは何も変わらない。
ただ俺は大ちゃんに告白をし続ける、
それだけだ。
昨日のことを大ちゃんは忘れる。
なかったことになる。
だから、もう一度告白をする。
そして、一日だけの恋人を、ずっと繰り返す。
薮はそれをなんとも言えない顔で見続ける。
お互い様だろう、なんて思うけれど。
「それでいいの」
薮は、たまに俺にそう問いかけてくる。
答えはいつも決まっている。
「これでいいんだよ」
そう答えれば、
決まって薮は泣きそうな、苦しそうな顔をする。
なんで薮がそんな顔をするの、とは言わない。
薮なりに大ちゃんを大事に思っているけど、
それと同時に俺のことも
大事に思ってくれていることも、
知っているから。
だからこんな状況を、
薮は間近で見続けることが苦しいのだろう。
「大ちゃん、大丈夫ー?」
「あ、伊野ちゃんお見舞いに来てくれたの!?」
「そーだよ、それで大ちゃんに伝えたいことがある」
「へ?」
俺たちは、何度も同じことを繰り返す。
何も覚えてない大ちゃんが、
俺がお見舞いに来たことを喜ぶシーンから、
全てが始まる。
悲しくないって言ったら嘘になるけど。
「俺は、大ちゃんが好きだよ」
幸せそうに、
でもどうしてだか切なそうに、
顔を赤くして笑う大ちゃんを見るだけで、
俺は全てが報われる気がするんだ。
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べーちゃん(プロフ) - 切ない話だったけどとても素敵でした泣 いのちゃんが強いな、すごいなと思いました。そして大ちゃんが可愛かったです。ハッピーエンドって言えるかどうかわからないけど、終わりが好きでした。 (2017年10月17日 7時) (レス) id: 0bf64f6267 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - keiさん» コメントありがとうございます!始まったときから読んでいるとは…ありがとうございます!と同時に更新遅くて申し訳ない気持ちでいっぱいです(;;)そんな中最後まで着いてきて頂き、さらに何回も読んでくださるとは本当に嬉しいです…!次回作も頑張ります(´ヮ`*) (2016年12月20日 21時) (レス) id: 2cfd20ff13 (このIDを非表示/違反報告)
kei(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!小説が始まったときからこっそり読ませて頂いてました。本当に素敵なお話で感動して、ホントに完結しちゃったって感じで通知欄に更新がないのが寂しいです…。でもこれからも何回も読ませて頂きます!これからも頑張って下さい! (2016年12月20日 19時) (レス) id: adb857be1d (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - ひまわりさん» コメントありがとうございます。号泣とは…!嬉しいです;_;たまに文章変かな?と思うときがあるのですがちゃんと伝わっているみたいで安心しました(笑)次の作品も今書いている途中なので気長に待って頂けると幸いです(*^-^*) (2016年12月20日 6時) (レス) id: 2cfd20ff13 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - 乙音さん» コメントありがとうございます。なかなか更新出来なかったのですが、最後まで読んで頂き本当にありがとうございます;_;次の作品も素敵なものが出来るように頑張ります! (2016年12月20日 6時) (レス) id: 2cfd20ff13 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ま つ り。 | 作成日時:2016年9月6日 19時