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結局、ワインもケーキも花束も捨ててしまった。


あの日聞いた風の音は日増しに強くなり、俺の体内を乾かしていく。


大ちゃんと過ごした部屋から引っ越すことなんて出来なくて、気が付けばもう1年が経とうとしていた。









そんな年の暮れ、クリスマスが近付こうとしているある日、テレビはそのニュースを大々的に放送した。


精子を卵子に、卵子を精子へと遺伝子の改変することに成功した、とアナウンサーが興奮しながら視聴者へと語りかける。


これにより、同性間での子作りが可能になり、


人口減少に歯止めがかかるのではないか、と。









どちらかというと、肯定的に伝えるアナウンサーに意外な気がした。


と同時に昔、大ちゃんと話した内容を思い出す。









大ちゃんが小説を書く際の資料にとドキュメンタリー番組を見ていたときのことだった。


俺もたまたま隣で見ていると、キリスト教の歴史についての内容だった。


番組の中で、なぜ同性愛がキリシタンの間で禁止されているのかの説明がなされる。









歴史ある宗教は、生きる方法としての術を授けるものが多い。


あれは食べてはいけない、こうしてはいけないなどといったものは、


当時の衛生が良くなかったから戒めとして書かれ、


それが今では厳格に守られている規律となっているものが多い。


それらはすべて、子孫を増やし、宗教を信仰する人口を増やしたためのもの。


同性愛も同様に、要は子どもができないからという理由で禁止されている、というのが番組の見解だった。









「それなら、同性間で子どもが作れるようになったら、世界はどう変わるんだろうね」









ぽつり、とその番組を見ていて大ちゃんは呟く。









「日本には男色っていう文化があったけど、キリスト教の伝来と共に禁忌になっていった。


今ではすっかり隠して生きていかなければいけない。でも、同性間で子どもが作れれば、同性愛者は堂々とカミングアウトするようになるのかな」









大ちゃんの目はテレビ画面に釘付けになったまま俺の方を見ようとしなかった。









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ほっぺ(プロフ) - 凄く続きが気になります!お忙しいかとは思いますが、更新再開気長にお待ちしてます! (2020年6月30日 22時) (レス) id: 923ca6dc6e (このIDを非表示/違反報告)
やぶありLOVE(プロフ) - 続き気になります!更新お願いします! (2020年3月7日 10時) (レス) id: 406a1fec80 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - この小説好きなので更新再開待ってます (2018年8月1日 22時) (レス) id: d204f4b0c0 (このIDを非表示/違反報告)
ありきち - まつりさんのいのあり小説がホントに大好きです! これからも更新待ってます 。頑張って下さい !! (2018年3月22日 22時) (レス) id: 9edaa1908a (このIDを非表示/違反報告)
ま つ り。(プロフ) - はるさん» ありがとうございます!更新遅めですがお待ちください(><) (2018年3月6日 21時) (レス) id: 28c1963f62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ま つ り。 | 作成日時:2018年2月5日 20時

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