あの日の後悔と想いと (in×ar)

◇１３ ページ13

.









そうして、年が明け、だらだらと過ごしていく内に5月に入った頃のことだった。









事前に何の連絡もなしに薮が家を訪ねてきた。









「…薮！？」









てっきり何かの配達かと思いドアを開けると、


意外な来訪者に目を丸くする。


三年ぶりに会った薮は呆れたような顔をした。









「一応芸能人様がそんなに簡単にドア開けていいのかよ」









本当に久しぶりだ。


来るときはいつも突然だけど、それは三年経っても変わらなくて、俺は少し笑ってしまう。


部屋に上げろという薮に、俺はチェーンを外し招き入れた。









今は高木同様海外で仕事をしている薮は、


スーツケースも持っておらず、デイバッグ一つを背負っている。


学生時代から変わらない薮に何だか嬉しくなった。









「久しぶり。今、休み？」








「いや、さっき日本に着いて、明日には帰る」








「とんぼ返りじゃないの。何か用事でも？」









言いながら、薮に出すコーヒーを用意する。


薮の方も勝手にソファに腰掛けた。









「まぁな。今日ここに泊めてくんね？」








「ソファで寝るならいいよ」









コーヒーメーカーから湯気が立つ。


ふと振り返ると、薮がテーブルの上にあった何かを読んでいるようだった。









まずい、と思い、慌ててそちらの方に行くと


薮は案の定大ちゃんからの手紙を手に持っていた。









.

◇１４→←◇１２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す