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「朝ごはん作っとくからサッと入って」
俺が少し強く言うと伊野ちゃんはのろのろと離れていき洗面所から出ていった。
俺がタオルを用意してそれから髪の毛を乾かしていると、
伊野ちゃんはお泊まりセットのようなものを持ってもそもそと衣類を脱ぎだした。
俺は入れ替わるようにワンルーム内のキッチンへ向かい朝食の準備を始めた。
これからどうしよう。
パンをトースターに入れ、フライパンに油をひき卵を二つ割る。
俺はどうしたらいいかわからなくなっていた。
昨日の泣きじゃくる伊野ちゃんを見て自分のしてきたことの愚かさを知る反面、
ここで手を差し伸べれば今までの彼の為を思ってしてきたことが全て無駄になる。
けれど、実際自分も恋焦がれていた人と再開してしまったのだから
気持ちが揺らいでしまうのは仕方がないのかもしれない。
少しゆっくり考えよう。
できたトースターの上に目玉焼きをのせ、
そして小さなテーブルに運んだ時に、
伊野ちゃんもびしょびしょの髪にタオルを乗せパンツ一枚で現れた。
「服貸して」
それであのリュックのサイズか。
一人で納得しながら適当にスウェットを渡した。
伊野ちゃんは受け取るとそれに着替えながらまた洗面所に戻りドライヤーの音を響かせた。
俺もその間はレポートをしようとパソコンを広げにらめっこしていた。
数分して腫れぼったい瞼のまま帰ってきた伊野ちゃんは
ベッドを背もたれに俺のすぐそばに腰掛けて、
テーブルにのっていたトーストを『いただきます』と小さな口に運んでいた。
俺もパソコンを閉じ二人で静かに朝食を食べた。
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shiori(プロフ) - はじめまして!この作品が大好きでどうしても続きが見たいと思ってしまいます…!大変かとは思いますがぜひよろしくお願い致します!! (2019年9月20日 0時) (レス) id: ae1427f3b0 (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - P.S. 14話の「大ちゃんを適当にあしらいながら」に少し違和感を感じたのですが…もし違ったらごめんなさい!! (2018年9月5日 2時) (レス) id: 25896fb88b (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - まつり。さん、初めまして。作品、続きが出るのをワクワクしながら待っています^^ 更新、お忙しいかと思いますが、まつり。さんのペースで、頑張ってください。陰ながら応援しています! (2018年9月5日 2時) (レス) id: 25896fb88b (このIDを非表示/違反報告)
ま つ り。(プロフ) - あぽろさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです(;_;)頑張ります!! (2018年8月26日 16時) (レス) id: 28c1963f62 (このIDを非表示/違反報告)
あぽろ(プロフ) - すごい続きが読みたくなるようなお話ですごく面白いです!これからも更新頑張ってください! (2018年8月26日 16時) (レス) id: 45c25e2e4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ま つ り。 | 作成日時:2018年8月1日 22時