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「なに、俺に野宿しろって言うの?」
ぐりぐりとお腹に指を押さえつけてくるから俺はその手を払い除けた。
「明日も仕事でしょ……駅前にホテルあるからそこに泊まりなよ」
途端伊野ちゃんは不機嫌だったけれど、にやりと笑った。
「あーれ、言ってなかったけ?」
こういうときの伊野ちゃんは大体望んだ通りに動いてくれない。
「俺4日間お休み貰ったんだ〜」
指を4本俺に向けて立てる。
「その間はずーっと大ちゃんと一緒だよ」
「……」
最悪だ。
文句を言うのも面倒になり俺はポケットに深く手を突っ込んで歩き出した。
伊野ちゃんは置いてかないで〜とパタパタと後
を追う。
そして当たり前のように勝手に腕に絡みついてこようとする。
「俺別に泊めるなんて言ってないけど」
隙間に無理やり伊野ちゃんの手が絡まってさらに距離が近くなった。
「いいの。大ちゃんなら俺を野宿させたりなんてしないでしょ?」
お酒の匂いが鼻につく。
いつの間にか伊野ちゃんは知らない伊野ちゃんになってしまった。
俺がそう望んだ。
望んだはずだったのに。
俺はマフラーに顔を深く埋め直した。
「……なんでここがわかった?」
伊野ちゃんは上機嫌なのか鼻歌を歌っていた。
「俺には俺のことを気に入ってくれてる少しお金持ちの先輩がおりまして〜ちょっと頭下げて探してもらっちゃった〜〜」
名前は聞かなくてもわかる。
だからそれ以上は触れなかった。
伊野ちゃんがどんな頼み方をしたのかは知らないけど、
彼を動かすなんて伊野ちゃんも只者じゃないなぁとちょっと怖くなった。
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shiori(プロフ) - はじめまして!この作品が大好きでどうしても続きが見たいと思ってしまいます…!大変かとは思いますがぜひよろしくお願い致します!! (2019年9月20日 0時) (レス) id: ae1427f3b0 (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - P.S. 14話の「大ちゃんを適当にあしらいながら」に少し違和感を感じたのですが…もし違ったらごめんなさい!! (2018年9月5日 2時) (レス) id: 25896fb88b (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - まつり。さん、初めまして。作品、続きが出るのをワクワクしながら待っています^^ 更新、お忙しいかと思いますが、まつり。さんのペースで、頑張ってください。陰ながら応援しています! (2018年9月5日 2時) (レス) id: 25896fb88b (このIDを非表示/違反報告)
ま つ り。(プロフ) - あぽろさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです(;_;)頑張ります!! (2018年8月26日 16時) (レス) id: 28c1963f62 (このIDを非表示/違反報告)
あぽろ(プロフ) - すごい続きが読みたくなるようなお話ですごく面白いです!これからも更新頑張ってください! (2018年8月26日 16時) (レス) id: 45c25e2e4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ま つ り。 | 作成日時:2018年8月1日 22時