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「え、」
「……っ、」
店からアルバイトくんが飛び出してきた。
俺が驚いて目をぱちくりさせていると、
後ろから店長と思われる男が慌てて出てきた。
「伊野尾くんっ…ひっ!」
中年のその男は、俺を見るなりびくっと飛び跳ねた。
「す、すみませんね〜。ちょっと給料の件で言い争ってまして…」
「言い争って…?」
そう言われ、視線をアルバイトくんに戻す。
よく見れば、
アルバイトくんの服がめちゃくちゃに乱されていた。
シャツのボタンは弾け飛び、
スボンのチャックはおろされている。
彼は空いた胸元を必死に抑えていた。
密かにその肩が震えていることに気付いた時、
俺はことのすべてを理解した。
「ねぇ、店長さん。話し合いでボタンって吹き飛ぶものなんですか?」
「…それは、いや…ちょっと彼が興奮して取っ組み合いになりそうで…」
「あんたの服は一切乱れてないけど」
「…お客さん、悪いけどこれは店の問題なんで…。さ、早くその子をこちらに…!」
店長が手を伸ばしてきたので、
俺は問答無用でその手を叩き落とした。
すると、ヒーヒーと腰を抜かす店長。
その店長に向かい、
アルバイトくんは口を開いた。
「店長…俺、今日で辞めます」
「ひっ、そんなこと…!」
「それに俺、彼氏いるんで…。ね、……薮さん」
名前を呼ばれて俺は驚いた。
俺から名前を教えたことはない。
なぜ知っているのか。
疑問はたくさん残る。
でも、それよりも…
今はこの流れに乗る必要がありそうだ。
「あぁ…俺の恋人に手出すなよ、店長さん」
「なっ…そんな!」
「帰るぞ。……伊野尾」
「っ!…はい、薮さん」
名前を呼ばれて一瞬驚いた顔をしていたけど、
伊野尾は素直に俺についてきた。
あの場から出来るだけ早く離れようと、
タクシーに乗り込む。
不安そうな伊野尾の手を握りながら、
俺は自分の家へと彼を連れて帰った。
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たべっこ(プロフ) - 可愛らしいお話にキュンとしてます。続き楽しみにしながら更新を再開を気長に待ってます。 (2018年8月2日 9時) (レス) id: 330ed6c9f4 (このIDを非表示/違反報告)
槿(プロフ) - 面白くて続きが気になります!更新頑張ってください! (2018年1月18日 23時) (レス) id: dcd6098eeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ま つ り。 | 作成日時:2017年12月5日 20時