大好きだったよ、愛してる。(in×ar)

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二人しておしぼりで顔を拭いていると、


お通しの揚げ出し豆腐とビールがやってきて、


水滴のついたジョッキが非常に魅力的だ。


口の中に唾液が溜まる。









「じゃあ再会を祝して…乾杯！」








「乾杯」









カチャン、と分厚いガラスのぶつかる音。


琥珀色の液体を一気に流し込めば、


一瞬にしてアルコールが体中を巡る感覚。


俺がビールを本当に美味しいと感じるようになったのは、


実は社会人になってからだ。


喉を鳴らして美味しそうに飲む伊野ちゃんを見て、


この人は大学生の頃からビールが好きだったな、


なんて昔を思い出した。









すぐさま料理が運ばれてきて、テーブルがお皿でいっぱいになる。


炭火で焼かれた香ばしい肉の匂い。


つやつやのたれが絡んだ鶏皮は食べると脂がじゅわっと広がって、


だし巻き玉子は優しい味がした。


うん、美味しい。









「大ちゃんほんと久しぶりだね〜。まさか偶然会うとは思わなかった！」








「俺もびっくりしたよ」








「もうずっとこっちなの？」








「今のところは」









入社三年目で大阪支社に配属になってからろくに帰ってこなかった。


いや、帰ってこられなかった。


この街にはできるだけ近寄りたくなかったから。


だってこの街には…









「…結婚式、行けなくてごめん」









伊野ちゃんと、その奥さんがいるんだから。









声は震えたりしていないか。


泣きそうな顔になっていないか。









「しょうがないよ、仕事でしょ？俺たち社畜は企業には逆らえませーん」








「伊野ちゃんも立派に社畜してる？」








「そうだよ〜！新人指導してるの俺が！」








「またかわいそうに…」








「ちょっと！どういう意味！？」









ほら大丈夫。普通だ。









「大ちゃんは？彼女いないの？」








「…ちょっと前に恋人と別れたばかりで」








「マジかー、それは残念！」









大丈夫、できる。


ちゃんと後輩でいられる。


いちいち傷ついたりなんかしない。









「…ぼんじり頼むね」









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