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頭の後に手を回されて、そっと腕を掴まれた。
身長差のある俺が、
すっぽりと伊野ちゃんで見えなくなる。
「大ちゃんが、他に好きな人ができたなら、俺は諦めきれないけど……大ちゃんの幸せと引き換えの痛みなら、受け入れるよ。…でも、もしそうなっても、俺はずっと好きだよ」
伊野ちゃんのことを好きじゃなくなった、
なんて言えるわけがなかった。
その１年後、伊野ちゃんをまさにそのセリフで傷つけることになるなんて思ってもみなかった。
伊野ちゃん以外、眼中になんて、ない。
たとえ、明日貴方が誰かを愛しても、
俺は君が好き、と。
言わなければ崩れるような未来に俺も巡り逢うとも、思っていなかった。
俺は伊野ちゃんの言葉に引かれたように自分が戻ってきて、
俺には勇気がなかったのだと知った。
「いのちゃん、おれ、おれは、不安だった、伊野ちゃんに釣り合わない。女でもない、いのちゃんをささえる、自信が……」
子どもが産めない性別で、
世間にも認められるはずのない恋愛で、
言ってしまえばそれだけでも、
俺らにはそういうことが一生付きまとう。
伊野ちゃんなんか、もし俺らの関係がバレたら、
曝し者にされるだろう。
俺らの関係は人の目が憑く。
手を繋ぐだけで、
通り過ぎる人が振り返ってその手を凝視するだろう。
キスをすれば、後ろ指を指されるだろう。
時には、友人にも軽蔑される。
そんな中で生きていく自信がなかった。
伊野ちゃんが、強張る俺の肩をしっかり掴んで一層強く引き寄せ、ぎゅうぎゅう抱きしめた。
「好きなら、それでいいんだよ。自信とか、釣り合うとか、関係ないと思う。必要なのは好きかどうかと、自分自身、それから、２人でいることじゃないかな」
そのセリフには聞き覚えがあった。
最後のセリフは、
俺が伊野ちゃんに言った言葉だ。
覚えて、くれていた。
俺は、伊野ちゃんに違う、別の好きな人ができても傍にいたいと思うだろう。
見て見ぬ振りをしてしまうだろう。
桜の中で、綺麗な感情が止まなかったあの日も。
俺も伊野ちゃんも願う子どもが、
絶対に産めないということも事実として
それごと愛してしまおうと、あの日決めた。
子連れの母親を見て、
優しい表情をできるようになったのは、
この日の決意があるからに違いない。
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ま つ り。(プロフ) - 桜夜兎。さん» ありがとうございます。素敵なお言葉もありがとうございます嬉しいです( >_< )いつもお話見させてもらってます…！まさか感想を貰えるとは…！お互い頑張りましょうね^^* (2018年2月12日 20時) (
レス) id: 28c1963f62 (このIDを非表示/違反報告)
桜夜兎。(プロフ) - 前作から拝見させていただきました。とても切ないお話で、私的には大学１年生の時の喧嘩と今の自分を比べる大ちゃんがとても好きでした。続編も合わせ、大号泣してしまいました(笑)これからも執筆活動頑張ってください(*^^*) (2018年2月12日 13時) (レス) id: 13ee6b4345 (このIDを非表示/違反報告)
べーちゃん(プロフ) - とても素敵な物語でした泣 本編と同じように昔の思い出も出てきて面白かったし、空港のシーン、いのちゃんが考えてくれたことは素晴らしかったです。感動しました泣 (2017年10月24日 15時) (レス) id: 0bf64f6267 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - ひまわりたんぽぽ@さん» 感想ありがとうございます。本編ではあまりいちゃこらさせられなかったので、今回することができたので満足しています。まだまだな私ですが今後の作品もよろしくお願い致します…！ (2017年8月29日 21時) (レス) id: 28c1963f62 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわりたんぽぽ@(プロフ) - 完結おめでとうございます。本編での2人の深い愛情と少しの狂気、続編では一転して甘々な2人。まつりさんの文才が羨ましいです。 (2017年8月29日 20時) (レス) id: 23baff6c1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ま つ り。
| 作成日時：2017年8月10日 21時
