【男主】絡みついて離れない Level2【影山飛雄】

74話 ページ27

『ひさかたの 天飛ぶ雲に ありてしか 君を相見む おつる日無しに』


思い出していた恋歌を詠む。やっぱり綺麗な歌。こういうのが女子は好きだろ。特に文科系。


『現代語訳は、空を飛ぶ雲になりたい そうすれば あなたに会えるのに 毎日でも、です』


誰にも咎められることなく、青空に気ままに浮かぶ雲を見ていると、羨ましくなる。

もしも、雲になれたなら、毎日でもあの人の元へ飛んで行けるのに。

そんな思いが伝わってきますよね。詠み人が愛しい人を思い、目をつむって雲になってふわふわと会いに行くイメージをしているのが、目に見えるようで、好きです。


−−−ここまで一息に言って。我に返る。


『すみません。余計な話を。さあ、授業へ戻ってください』


がたり、といつの間にか立っていた椅子腰をおさめながら、深いため息をつく。




少しざわめく教室。


女子達のささやき声と熱っぽい視線。


あー、ごめんキモかったよな。ごめんごめん。

出者ばってすみません、そう彼女らに静かに謝罪をする。


黒板の方では、少し興奮気味に早口で俺のことを褒め称える先生がいた。




はっ、馬鹿じゃないの。


ここって進学クラスのはずだったけれど。レベル、低いな。



ふと、目を逸らしたさきに此方を見ていた山口と視線がぶつかる。



純粋に尊敬する眼差しとあともう一つ。


欲望に濡れた瞳。



照れたように笑って見せれば、カアっと頬を紅く染め上げる。


あー、面白い。



放課後、期待してますからね？






−−−このとき、満足気にくすりと微笑む俺を見つめる、絡みつくような視線に、気づかなかった。







(なんでAと山口が……)


(本当にA君は可愛いな。ツッキーごめんね、お先に失礼しちゃうよ)

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