【男主】絡みついて離れない Level2【影山飛雄】

64話 ページ17

なんとなーく、及川センパイの放つオーラが変わった気がして、上を見上げて見る。



『いー顔してんじゃん……？』


「ぁ、んっ、はぁ、んぐっ」


言葉にならない感嘆。いったあとで疲れているのか。




にしても、アレだな。。。



『ねぇ、とおる？』

「……なに」


落ち着いたらしいので気になっていたことを



『言っちゃいけないのかもですけど、もしかして童貞ですかぁ〜？』



「はぁ!?この及川サンがそんなわけないでしょ。ど、童貞とかっ」


あからさまに視線が泳いでいる。

図星、か。



それなら本番出来ないんだけど。

男同士のって下準備とか必要だし、童貞じゃちょっと不安。



男とやったことあるやつ、そうそう居ないから、それを言えば全員どーていなんだけども。



ほら、童貞って余裕なくてガツガツしてるじゃない？



『及川センパイ。もうそろそろ、帰らないと、トビオが訝しみます』


甘い口調から至極まっとうな、いつも通りの口調に戻る。



「へっ……？」


唖然とした顔で、俺を見つめる及川センパイ。


「や、まだ終わってない……」


『一応、本番はしていないですが、殆ど全部したじゃないですか』



自分でも酷いことを言っているということは理解できる。




散々、理性崩壊させておいてポイッ、はないだろう。普通。



『ていうか、モテるのになんで及川センパイ、童貞なんですか』



恨みがましく睨む。とんだ責任転嫁だ。



「女の子はいっぱいよって来るけれど、喰ったら色々大変じゃん？皆の夢見る王子様でいないとだし」


女の子って妊娠するし一夜の過ちとか嫌だよ。




あ、意外と真面目な理由だった。


そんなことかんけーないけど。




最後に、と窓ガラスの向こうを睨みつけた。



ジーッという機械音。


小型カメラ。



及川センパイはそれほど機械に強くないし、及川センパイのではない。



そうするとたどり着く人物は




『お前か、国見』



「国見ちゃんがどうしたの？」



いいえ、なんでも。それではさようなら。



そう笑みを見せてから部屋を後に、及川家を後にした。






−−−




『トビオ、ただいま!!』



家に帰るシミュレーションをしながら道を歩く。



多分、というか確実に変人だな。


分かっているけど、やってしまう。



結局、やれなかったし消化不良。



空は、綺麗な茜色に染まっていて。



こんな不健全な俺のことを咎めているような、そんな気がした。

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