淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

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〜side Rintaro

修学旅行が無事に終わり

インターハイ予選を控えた梅雨の始め

「ねえ、お前の片割れ何してんの」

「昨日、NARUT○でペイン戦見とったから
雨に濡れんのがカッコええと思ってんねん」

慌てた銀が侑を傘にいれようとするも
振り切ってドヤ顔で雨の中を歩いていく侑


治は自分の荷物の他に侑のであろうバッグと傘を片手にため息をついた

「やっぱアホだな侑って」


面白い光景をおさめるためにケータイを探す


「…やっぱ俺も雨に濡れれば良かった」

｢DNAこっわ。どったの治｣

ケータイを取り出して構えると

「…なんとなく」

画面にうつる侑は

シンプルな白い傘の下でAに説教されながらタオルで頭を拭かれている

(なんとなく、ねぇ)


双子は体格も顔もバレーセンスも恵まれていて

何でも持ってますみたいな顔をしてる

【勝ち組】なんだと思ってた



でも、侑も治も


(変なとこで不器用なんだよなぁ)

他人に興味なんてありませんって顔してるくせに

マネージャー1人に振り回されっぱなし

ー

『治って結構抜けてるよね』

｢んな事ないで｣

『だっていつもいろいろ聞いてくるでしょ』

｢ええやんか｣

『いいけど』


「治、本当は自分で分かってたでしょ」

｢…内緒な｣

ー

多分、話す口実になるならなんでも良かったんだと思う

兄弟がポンコツなせいか、元の性格なのか

治はぼんやりしているようで結構しっかりしているし

侑より周りを見れているし、一線を超えない


だけど、Aのことになると意固地になったり
時々ワガママ言ったりすることが多いように見える


ケンカこそするけど
結局

「まぁ、ツムやし」

とどこか諦めている治は


不機嫌になった侑をAが追いかけた後

「ミスド行ってきてええ？」

「また？
帰ったらでいいじゃん。こっちの美味いもん食おうよ」

「景品、取りたいねん
Aが好きって言うてたキャラのやつ、1等のポイントやっと貯まりそうやって」

「…そのためにずっとドーナツ食ってたの？」

お手伝いをして貯めたお小遣いで

自分の大好きなご飯を制限して

Aにぬいぐるみを
侑にアイスを買う

そんな治の優しさが

「みんな侑に甘いって言うけど、俺はAも充分甘やかされてると思うんだよね」

彼女に伝わりますように


「それは同感やな」

銀は少し笑って

「でも、角名もその甘やかし隊の1人やで」

「…自覚してる」

俺たちにとって彼女は特別で
どうしようもなく、愛おしいんだ

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