淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

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〜you side

「ちょっと岩ちゃん！及川さんよりカッコイイのやめてよ！」


「うるせえクソ川。行くぞ」

岩泉さんに引きずられる及川さんを追いかけるように、青城メンバーも後に続いた



「及川さんって結局Aのこと好きだったのか？」


『いや、違うと思うよ』


「なんで俺がAを好きだったら手に入れたいんだ？」


『飛雄にとって1番な人の1番が及川さん(自分)だったら飛雄が悔しがるだろうと思ったからじゃない？』


飛雄は頭にクエスチョンマークを浮かべている


『でも大丈夫だよ
飛雄にとっての1番はバレーでしょ

誰もあなたからバレーを奪うことなんて出来ないから』


「そうか」


飛雄はホッとした顔をして


「でもAのことも好きだから及川さんに取られんのは…

なんか、嫌だ」



切れ長の目を、不器用にそらして
ごにょごにょと告げる飛雄の頭を撫でる


『大丈夫だよ
私も飛雄のこと大好きだから』



「！」

今度は目をまん丸にした飛雄は嬉しそうに頷いて


「おーい影山！そろそろ戻ってこいってさ！」


オレンジ頭のチームメイトの声に返事をして


「じゃあ、またな」


と走っていった



・・・

「飛雄君とは話せたんか？」


『うん』


先に応援席に座っていたお父さんは


「若利の試合はええの？」


と尋ねる


『決勝に来いって言われてるから』



「そこまでで負けるなんて有り得ないってことか

強気やな〜」


宮城に帰ると連絡をした時、若利君から返事が来た



帰省の目的は法事で

アルコールの過剰飲酒が原因で亡くなった母方の祖父の


離婚しているのだから、お父さんが出る必要はないのに


“おかんを産んでくれた大切な人や

お義父さんおらんかったらおかんも、Aにも出会えてないからな”



実家にも顔を見せず、どこで何をしているかも分からないお母さんの代わりに


私とお父さんが出席をした


たまには休んでこい、と監督達の好意でこうして宮城の予選まで見にこれているんだけど



昔、お酒が入るとおばあちゃんやお母さんに手をあげることもあったというおじいちゃん


“せっかくいい旦那さんに拾って貰えたのにフラフラと
本当にどうしようもない娘で…

Aちゃんはあんな風に育っちゃダメよ”


世間体ばかり気にするおばあちゃん


どちらも特別好きじゃなかったけど


「Aはお2人に可愛がってもらったからな」


お人好しなお父さんのために

私もいい娘でいなければと思う

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