淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

・ ページ43

〜No side

「なんで、ですか」


「その怪我やったらどうせ練習も出来へんやろ」


「でも、ボール拾いとか筋トレとか…
できることやって沢山あります！」


「急性期は大人しくしとくんが鉄則や
そんなエネルギー有り余っとるんやったら南の手伝いでもしたり」

「…！」

「監督にはもう許可取ってあるし

春高前はドタバタするからな
普段やってもらっとる事のありがたみに気づくええ機会なんとちゃうか」



「勝手なことせんといて下さいよ！
大事な時期に怪我して、迷惑かけたことは申し訳ないと思ってます、

マネージャーの仕事手伝うんが嫌なわけやないし、Aにも感謝してます


でも、今ボールに触らんでそんなことしとったら俺は…」



「“そんな事”思うてるうちはケガ治っても練習戻ってこんでええで」



「…え」


「お前の仕事は、はよ怪我治して
練習復帰して春高本戦に備えることやろ」


「やから俺は、そのために…」


「オーバーワーク、俺らが気付いてないと思っとったんか？」


治はビクリと肩を揺らす

何度か北からは注意を受けていたのだ




「南、泣いとったで」


「え？」


「治の異変に気づいとったのに止められへんかったから
私のせいやって」



「…ちが、」


「あいつはそういう責任背負い込むタイプって知ってるやろ」


「…っ、」


「人に傷つけられた時はあんだけ怒っとった癖に自分は平気であいつ泣かすん？」

※シリーズ2参照


「お前が倒れた時の南の顔、見たか？」



治は

今にも泣き出してしまいそうな顔で
処置をしてくれた彼女の手が震えていたことを思い出す


「あんな顔させたい訳ちゃうやろ」


「…」


「一旦頭冷やし

お前らはあんまりサポートの方の仕事やるような機会なかったやろうけど

無駄なことちゃうで」


北はそう言って教室を出ていった



《1週間バレー禁止》



・・・


治が教室に戻ると南の姿がない

「Aは？」


「飯食ってすぐどっか行ったよ
予算がどーのとかいって」



“春高前はドタバタするからな”

「……」


「ほんで、北さんからの話ってなんやったん？」

「…しばらくバレー禁止やって
Aの手伝いせぇって」


「バレー禁止ぃ？」

「…ま、ええんちゃう
せいぜい俺のために這いつくばって働けよサム」

「別にお前のためちゃうわ」

2年組はいつものようにからかいあいながら



「あ、そうだ治」

「ん？」


「Aのこと泣かせるのは許さないからね」

「…はい」

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す