淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

・ ページ41

「なんや、双子仲直りしとるやん」

朝、2人で1つのスマホを覗き込みながらはしゃいで体育館に入ってきた2人に銀は胸を撫で下ろす


私達の視線に気付いた双子は

「「おはよーさん」」

と声を揃えた


その顔には複数のガーゼや絆創膏



(せっかく綺麗な顔してるのに)


やや侑の方が怪我が多いのは、多分
本気でやれば治の方が強いから


「いつ仲直りしたの？」

「サムが俺とウイイレしたいって言うから
仕方なく付き合うたってん！」

「…はぁ〜？」


「ん？」

「…お前も乗り気やったやんけ」

「へっへ〜」




ニコニコの侑に呆れ顔をした治はボールを取りに来て

「どしたん？A」

『ううん。
おはよ、治』

「はよ〜」


くあぁ、と欠伸をしながら「いてっ」と顔をしかめる


『大丈夫？』

「おん。へーき」


傷がしみるのか、手で頬をさする治


『あんまりケンカしないでよ』


「…わかっとる。すぐ仲直りしたやんか」


『じゃなくて、
治が痛いのも、傷つくのも嫌だよ』


「へ、？」


『お互い様なのかもしれないけど、せっかく男前に産んでもらったんだから綺麗な顔に傷つけないようにね』


痛々しく貼られた絆創膏に触れる


『まだ痛む？』


「もう痛ないよ」


『そっか』


「A、俺の事男前やと思ってたん？」


『みんな言ってるでしょ？』


「みんな、とAはちゃうよ」


『男前だよ、侑も治も』


「ええ事聞いたわ」


『言われ慣れてるくせに』




治はいつも通り笑ってたけど


『あれ、治は？』


「キリ悪いからもう少しやるって」


『そう、』

いつもなら1番におにぎり食べに飛んでくるのに


・


『治、起きて』


「…ん、」


『もう4限終わったよ。ずっと寝てたの？』

「んー、現国から記憶ない、」


「それ1限目じゃん」


『夜更かししてたの？』


「ん゛、」




『起こしてあげるから、もう少し寝たら？』

「おん、ありがとぉ」

お昼を食べ終わって、またすやすやと眠りにつく治



「なんや、治寝てんのか」

「ほんま食っとるか寝てるしかないでこのブタサム」



確かに治はよく食べるし、よく寝るし


だけどどこかいつもと違うような




「ツムトス上げて」


「お！珍しくやる気やん！」


「張り切っとるなぁ、治！県予選もうすぐやもんな」


ほんの小さな違和感が

大きな代償を招くって、分かってたのに


ー

「おい、大丈夫か治!?」


「……っ」


「南、救急箱！」

『ハイ、！』

・→←ー

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す