淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

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「治、糖尿病になるんじゃない」


「その分辛いもんも食うてるで」


「じゃあプラマイゼロとはなんないよ」




前を歩く治たちの会話を他所に
心ここにあらずの侑

「Aちゃん」


『ん？』


「なんで俺にハンドクリームにしようって思たん？」


侑の茶色い瞳が私の目を捉えた


「しかも2本」


『侑、いつも2本持ってるじゃん』

1本は少し大きめのサイズでいつもカバンに入っている

そしてもう一本は


『最近大きい方持ち歩いてるから、小さい方無くなっちゃったのかなって』


「！」

ポケットに入るサイズの細身で小さなチューブ

出先でも必ず持ち歩いていて、こまめに保湿している

『ハンドクリーム、沢山貰ってたみたいだからダブって申し訳ないけど、』


「俺がこれしか使わんの知っとるやろ？」

『！』



「大事に使うわ、ありがとうな！」


この、嬉しそうな顔は
普段の悪態も許せてしまうような、憎めない笑顔で



『じゃあ2人とも、いい一日を』


家に帰ると、倫から今日の写真が送られてきていた

銀前から思っとったけど、A靴紐可愛ええな!

角名 倫太郎確かに
写真だと余計目引くね

宮 侑俺ら黒ばっかやからピンク目立ってええな

銀最初ピンクの靴紐見た時はビックリしたけど、似合うとるな!


角名 倫太郎てかこの写真の侑顔うけるw


話は直ぐに流れていくけど
私のスクロールの手は止まる


(…？)


この靴は、昨年の誕生日にみんながくれたバレーシューズで

別の小袋にピンク色の靴紐が入ってた


普段自分では選ばない色


『…、』

勿体なくて捨てれずにいたプレゼントの包装紙をあさると



1枚の小さな紙が出てきた


«A、お誕生日おめでとう

いつもありがとう





治»




“なあ、Aのは？”


ちょっと拗ねたような、治の顔が浮かぶ



『治、』

《もしもし。どしたん？》

数コールの後、電話に出てくれた彼に


『私、誕生日の時に靴紐くれてたのが治だって気付かなくて…、みんなからだと思ってて


だから、治に個人的に用意できて無くて、』


なんで気付けなかったんだろう


翌日早速シューズをはいていった私に

「ほら、Aピンク似合うやん」

ピンク色を褒めてくれたのは、治だけだったのに


(らしくないから)

って諦めてたピンク

本当は可愛いなっていつも目を惹かれてた

電話越しに少し笑う声がして

《じゃあ１個欲しいもんあるんやけど》

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