淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

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倫が少し離れたところからスマホで動画を回し


私と銀はそれぞれプレゼントを持って双子の元へ

『「侑、治！お誕生日おめでとう」』



「…別モン？」


双子は目をパチクリさせて


「あけてええの？」


治の言葉に私たちが頷くと、2人はおそるおそるそれぞれのプレゼントを開封した



「「え、」」



「ハンドクリーム！」
「ケーキや！」




今度は互いのプレゼントを見てまた声を上げる


「これ…俺がいつも使っとるやつ、」

「俺、ホールケーキ？てかこれ…」



「サプライズ、大成功やな」

銀も嬉しそうにニカッと歯を見せて笑う

「Aが発案者やねん！」


昨年は喧嘩にならないようにって同じものをあげたけど

2人はそれを“まとめて祝われているみたい”だといった




だから今年は

せっかくなら、2人それぞれに望むものを、と思って提案した


「3人で作ったんやで！まぁ、ほとんどAやけど…

チョコプレートは角名がかいて、このキツネは俺！」

「これキツネやったんや…」
「おい」

真っ白なショートケーキの上に溶かしたチョコをかけて

真ん中をイチゴで飾り、チョコホイップとチョコペンで銀が描いたキツネ


不格好で、でも可愛く仕上がった

『ショートケーキにするかチョコケーキにするか迷ったんだけど

今年のクリスマスはチョコのブッシュドノエルにするかなぁって思ったから、土台はショートケーキにしたの』


「…おん」


『だからデコレーションはチョコにしてみたんだけど』


「めっちゃ嬉しい、」


『今日沢山甘いもの貰ってると思うし、保冷剤入れておうち持って帰って

良かったら侑とかご家族と…』




「食う。今」


『え』


「写真撮って、今食べる」


治の言葉に目を丸くしていると


「ちょ、侑〜！泣くなて！」


銀と、周りの笑う声


「泣いてべん゛っ」


倫はゲラゲラ笑いながらも片手だけはぶらさずにスマホを構えている


「ほら、写真撮ったるから倫太郎も入り」


大耳さんに促されて、背中を押された倫もを加え

5人で集合写真


「サム、1口ちょーだい」

「あかん。俺のや」

「1口くらいええやんか！俺の誕生日でもあるんやから」


「これは“俺の”」


治は本当に1人で平らげて

「ほんまにありがとうな、
今まででいっちゃん嬉しかったわ」

とはにかむ


『そんなにホールケーキ食べたかったの？』

治らしくてつられて笑みがこぼれる



双子の誕生日

体育館には賑やかな声が響いていた

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