淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

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決勝は井闥山学園


ここにも三大エースの佐久早聖臣
しかも唯一の私たちと同学年


「今年は優勝杯持って帰るで」


勝利に貪欲に燃える侑の瞳は

チームメイトの私たちですら圧倒される、強いオーラを放つ




「侑君ってテーピングとがほとんどしないですよね…
突き指とかしやんのですか？」



1年生のセッターの子の問いかけ


『テーピングすると感覚が鈍るんだって』


“指になんかついてると違和感ちゅーか、感覚鈍るねん。

曲げにくさとか、ほんのちょっとのズレが影響するし余計なもんはいらん”


そう言っていた侑の言葉を思い出す


『でも怪我もしたくないからって指は鍛えてるよ
爪も、指も丁寧に手入れしてる。見たことあるでしょ』


「あ、はい」


服も脱ぎっぱなし、片付けもしない
大雑把なあの侑が



指先や爪の手入れだけは、毎日欠かさず行う


荒々しい言動からは想像もつかない

丁寧なセット


侑の原動力は全部【バレーへの愛】





「前ー！前！」
「カバー！」

「ワンタッチ！」


「フォロー！」


試合中に響くみんなの声



「またデュース、！」

「頼む、ブレイクしてくれ〜」



30点を超えて両チーム体力も限界に近く

選手たちの体から湯気が上がっている


『侑、大丈____』



「めっちゃ高揚するわ
強い相手とやるんは最っ高や」


「ツム、お前の楽しさやのうて周り見てプレーせえよ」


「どこにトスを出すかは俺が決める
お前らは全部自分が打つ気で飛び込んできたらええねん」



「……」


「大丈夫やって！俺が気持ちええスパイク打たしたるから」


ニッコリ笑う侑に

眉をひそめる治



「無理、もう囮なんて飛んでらんない」


「角名！気張れや！」


タイムアウトも使い切って

落とせばあとのない稲荷崎




「侑！」

赤木さんが拾ったレシーブ



誰を使うか、直前まで敵は愚か私たちにも分からない



「ライト！」


治が助走に入る





「パイプ！」

アランさんのバックアタックはブロックに捕まり弾かれる



ボールはこっちのコートに落下して



試合は終わった






「井闥山すごかったな」

「稲荷崎のエースも凄いけどさ、あれウシワカだったら決まってたよなぁ、多分」

「それが三本指に入れない差ってことか」


すれ違いざま聞こえた声に
侑がカッとなって振り向く


「侑、ええから」

掴みかかりそうな侑を止めたのはアランさんで

「ごめんな」


「…っ、」

侑は撫でられた頭をぐしゃぐしゃとかいた

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