淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

・ ページ23

『ダメだったのね』

「見ての通り。昨日の夜から一言も口聞いてない」


インハイ3日目


今日準決勝に勝てば決勝も控えてるというのに
端と端でご飯を食べている双子


『治、』


「言うとくけど、俺からは謝らんで」

食べる手を止めないまま治が言った


「いくらAに頼まれても、あいつが皆の話に耳傾けて変わらん限り口聞かへんから」


『…うん』


「…そんな顔せんでも
プレーには支障きたさんから、大丈夫やって


こんなんしょっちゅうやし
あいつも試合中にそれで雑なプレーしたりはせんから」


Aは心配せんでええよ、なんて

『…わかった』

どこか一線引かれてるみたいだ


「双子。なにでケンカしてんのか知らんけど試合で迷惑かけたら承知せんからな」


「「大丈夫です」」

「プレーの話だけちゃうで。
今は準決勝っちゅう大事なとこや

お前らの空気悪いと周りも余計な気ぃ遣うし、コミュニケーション取りにくいやろ


プライベートで揉めんのは勝手やけど切り替えや」


北さんの正論パンチに


双子は背筋を伸ばして返事をした




「ツム、トスもうちょいネットから離して」


「あ、おん。」




「あー、良かった。治いつも通りになってくれて」

銀は横で胸を撫で下ろすけど


(いや、あれは…)



「ナイスキー！サム__」


侑のセットアップで決まった治のスパイク


「治ナイス」

「うぇい」

倫とハイタッチを交わした治は

次のローテーションに回る


「何してん、ツム次サーブやで」


「わ、分かっとるし！」

侑のハイタッチしようと上がっていた手は行き場をなくして

複雑そうにサーブのポジションに入った



侑はなんでって顔してるけど

普段侑が特に意識せず元に戻れてるのは治が我慢して、先に折れてるおかげ


「この喧嘩、長引きそうだね」

ローテで出てきた倫が呆れ顔で言った





全国三大エースの1人桐生八率いる
狢坂高校を破りベスト4



「お前ら軽く飯食うとけよ。腹一杯にはせんようにな」


「「「「はい！」」」」


OB会からの差し入れの捕食を配布して


「俺、Aのおにぎりがええ」

という治には、朝ホテルにお願いして食堂で作らせてもらったおにぎりを渡す



「白鳥沢や」

試合を観戦に来ていた紫のジャージの集団

「侑、残念やったな。やるの楽しみにしとったのに」


「…別に。全部勝てばええだけや
1番ってことは白鳥沢よりも強いってことやろ」

ギラギラと目を光らせる侑に

「そうやな」

と銀も頷いた

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す