淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

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「しゃぁぁぁぁ！」


「おお、気合い入ってんな…侑」

「さっきの休憩後から目ぇガンギマリしとるけど、なんかあったん？」


『…まあ…？』


「ノリノリやし、このままいけるとええんやけど」


頼む、と祈る尾白さんと対照的に
北さんは難しい顔で侑を見ていた


ピタリと演奏が止んで、侑のサーブ



「あ゛!?」


ものすごい回転と勢いをつけたボールがコートを飛び出して客席の方へ跳ね上がる


「ナイスホームラン」

「うっさいわ！サム！」



ぐぬぬ、と眉を顰める侑に



「侑。集中せえ」

「ぅ…。集中してますよ…！
今のサーブはミスりましたけど、調子ええし」


「俺が言うてんのは目の前の相手に集中せえ、っちゅーことや」


北さんが諭すように言葉を続ける


「なにをムキになってんのかは知らんけど、今戦っとる目の前の相手をろくに見れてへんやつはその先になんて行かれへん

ちゃんと前見てプレーしや」

「…はい、」


スパイクサーブはキレキレで
トスも綺麗に上がってる


でも

「攻撃型なセット自体が悪いわけやないけどスピード上げすぎて周りが見れんくなってたら意味ないやろ」



侑の奇想天外で自在なトスに

綺麗なスパイクが決まるのは、うちのスパイカーが優秀だから


侑の無茶になれっこの治ですら肩で息をしている

ワンテンポの遅れは命取り





2セットとも稲荷崎が抑えて準決勝進出が決まる



「おいツム。さっきのアレなんやねん

アラン君が対応してくれたから良かったけどなあ…」


「決まったんやからええやんけ」

「そういう問題ちゃうわ
危ないやろが


銀使った方が____」


「そんなんおもろくないやん

実際、銀に出すよりアランくんの方が決定率ええんか」


「あ゛？」


「お、治！俺はええから！
尾白さんの方が決まるん事実やし、」


「お前が色々考えてんのも分かるけどな、スパイカー(俺ら)はスパイカー(俺ら)で考えとることもあんねんボケが」



「はぁ!?白鳥沢負けとるやんけ！」


「おい、ツム。聞いて__」

「ウシワカ倒すん楽しみにしとったのになぁ〜」



「もう知らん。あんなやつ好きにやったらええわ」

「なにキレとんねんサム」

「人でなしに何言うても無駄やって気付いただけや」



戻ってしまう治を追いかける銀



「あーあ、治ブチ切れじゃん。
明日まで持ち越さないといいけど」

いつもは治が折れることで解決する事が多い双子のケンカ

『嫌な予感する』

私のこんな予感はよく当たる

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