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「なんやあれ!電球ソーダやって!欲しい!」
「ちょ、走んなって侑!」
『待っ…』
鼻緒が擦れて足の指に激痛が走る
『…っ、』
(やっぱり、浴衣なんて辞めればよかった)
らしくないこと、するから
前を行くみんなと距離ができて
ザワザワした祭りの騒ぎに声は掻き消される
『…痛、』
みんなはどんどん進んでくのに
私は立ち止まったまま
(いつか、置いてかれる)
集合写真で笑う【みんな】の中に
いつまでいられるんだろうって
不安になる
「おった。
置いてくとこやった____って、
およ、怪我した?」
『…』
みんなと話してたのに
笑ってたくせに
(なんで気付くの)
足元に目をやった治は
「歩くん痛いよな」
『へいき、』
「ちょっとだけ、我慢してな」
『え』
ひょい、と軽々と私を抱えると
お姫様抱っこして
『おさむ、大丈夫!歩ける…』
人通りを外れてすみの階段に下ろしてくれる
「ばんそこ貸して」
『自分で出来るから…』
「浴衣、せっかく着てんのに着崩れたら勿体ないやろ」
よいせ、と腰を下ろした治が絆創膏を貼ってくれる
「いつもと逆やな」
『確かに』
ふっと吹き出すと
顰め面をしていた治はようやく少し安堵したように眉を下げて
「…気づかんくてごめんな」
大きな図体を小さく丸めて
不器用に触れる指先がくすぐったい
花火の時間が近づいてカウントダウンが始まる
『治は花火見に行っていいよ?ここからじゃ見えにくいでしょ』
人混みが落ち着いたら合流するし、という私の持ちかけに治は首を振った
「俺はええよ。屋台飯制覇できたしここでの目標は達成済や」
『…』
「それに、花火はまた見に行ったらええけど、Aの足はそうもいかんやろ」
隣に腰掛けて
「こっからも見えそーやな」
なんて呑気に呟く治は
「…今年は諦めてたもう一個の目標まで叶ってもうたわ」
『?なにそれ』
「内緒」
ニッと悪戯顔を浮かべて
「あ、そうや。これやったら食えるんちゃう?」
小さなりんご飴を取り出す
「姫りんごっていうんやって」
これなら小ぶりやから汚さんでいけそうかなって
『こんなの、どこで…』
「写真撮り終わった後見つけて、買いに行って戻ってきたらAおらんかったから焦ったわ」
「…、ごめん」
「ちっちゃいんやからあんまウロウロせんとってな」
打ち上がった花火は木々に隠れてしまったものもあったけど
『綺麗だったね』
「せやな」
暗い心を照らした
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りな∞(プロフ) - あめみやさん» おはよう靴下は宮城と1部東北?地方特有らしいです😳穴あき靴下って言うより可愛いですよね💓 (3月4日 18時) (レス) id: 77d3b1abb5 (このIDを非表示/違反報告)
あめみや - おはよう靴下ってもしかして全国共通じゃないんですか……? (3月4日 11時) (レス) @page32 id: c8e075c880 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りな∞ | 作成日時:2023年12月13日 13時