淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

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｢まだ結構時間あるし、屋台ぶらっとみてく？｣

｢Aはなんか食いたいのあるん？｣


通り行く女の子たちの手には
綺麗な紅色のりんご飴


｢あ、りんご飴。
昨年食うてなかった？｣

『あー、うん

でも…


りんご飴、大きいから上手に食べれなくて浴衣汚しちゃうからいいや』

小さい頃縁日でお父さんが買ってくれたりんご飴

上手く食べれなくて、浴衣に零して

手もベタベタになって


私のせいでお父さんがお母さんに怒られていたのを覚えている


昨年は治の食べかけで、もう小さくなったのを貰ったし

洗濯できる私服だったけど


｢でも好きなんちゃうん？｣

『どうしても欲しいって程じゃないから』


｢…ふぅん｣

屋台で目星をつけながら、昨年同様穴場にレジャーシートで場所取りをして



｢俺さっきのじゃがバタのとこがええ
味の種類めっちゃあんねん｣

｢明太バターにしようや｣




｢お前らも来とったんか｣


よ、と手を上げるのは

｢｢アラン君！｣｣


3年生

｢お！A浴衣やん！｣

｢似合うな！可愛ええやんか｣

『あ、ありがとうございます』


｢ていうか、信介と並んだらええ感じやん！｣

赤木さんがトンッと肩を押すのは

浴衣姿の北さん

｢浴衣ええな、似合うとるわ｣


『北さんも…』

｢ばあちゃんが着させてくれてん
せっかくやからってな｣

北さんはおばあちゃんの話をする時、優しい顔をする

｢そうや、2人写真撮りーや｣

赤木さんの発案で撮ってもらった初めてのツーショット


｢A、笑顔固っ｣


みんなでも撮ることになって


｢これ全員入るか？｣

｢あー、尾白さんもっと侑の方寄ってください｣

｢きゃ♡アラン君ってば積極的っ｣


｢変な声出すのやめろや！｣



｢いきますよー

ハイ、チーズ｣

倫の長い腕とカメラスキルによって何とかギュッと収まった写真

このメンバーでの集合写真自体は初めてでは無いのに

部活で撮るのとは違うプライベート写真

｢倫太郎、撮るんうまいな｣
｢現代っ子や｣

写真を確認していた3年生が

｢え、てかAめっちゃ笑ってへん!?｣

と声を上げた

｢ほんまや！｣

｢治、何したん？｣


｢別に。A意外と笑いの沸点低いんすよ｣

連写で撮られた10枚で

治が私の耳元で呟いた一言に思わず吹き出してしまい

治と並んで笑っているところが納められている


｢でもええ写真やな｣

北さんは満足そうに微笑んで

｢お前らもハメ外しすぎんようにな｣

と3年生達は別れていった

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