淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

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そして迎えた期末テスト


｢なぁ、あの四字熟語のやつって答えなんなん？｣


｢あー、あの厚かましいみたいなやつやろ？｣


侑の言葉に治が答える

「俺、分からへんかったから厚利市民って書いたわ」


厚から始まる四字熟語を答える問題


「厚利市民の皆様に怒られてまえ」


「そういう銀はかけたん？」

「いや、俺もわかれへんかったから

あつむ宮って書いたで」

「銀は俺を人でなしの厚かましい奴やと思っとったんやな？」

「悪い悪い」

「せめて否定してくれ。泣くぞ」


『厚顔無恥。
厚かましく、恥知らずで
他人の迷惑などかまわずに、自分の都合や思惑だけで行動するって意味ね』


｢｢侑／ツムやん｣｣

｢おい｣

・・・

夏休みが始まって

セミの鳴き声と湿った暑さの中
アイスを咥えながら歩く帰り道


｢なぁ、今年も行かへん？｣


花火大会のポスターの前で侑が足を止めた


｢昨年いったやつか｣

｢今年も午前練やしええんちゃう？｣




｢Aと角名も行くやろ？｣



｢Aが行くなら｣


『うん、行きたい』



｢じゃ、決定な！｣

今年も、みんなと夏祭り…


｢A、嬉しそうやな｣

顔を覗き込んできた治がニンマリと笑う

『昨年、すごく楽しかったから
今年も行けるの嬉しいなって』

｢そらよかった｣

元気がない私を励まそうと
連れ出してくれた、みんなと初めての遊び


侑と仲良くなれた日


狐のお面を被った侑が私の腕を引いて
名前を呼んでくれた


｢なーなー｣

『ん？』

｢浴衣、着てこーへんの｣

『なんで？』

｢みたいやんか｣

『…考えとく』

｢それは絶対着てこーへんやつや｣



まだ夕暮れのオレンジ色を残す空の下で

｢今年ははぐれんなよお前ら｣

｢分かってるて〜｣


昨年と同じ場所で
同じように


『お待たせ』

待っていた4人は振り向いて

｢え、｣

｢A浴衣や！｣

わぁ、と声を上げる銀と
目をまん丸にして固まっている侑

｢ええやん。似合うとるわ｣

『ほんと？』

｢桃ちゃんと買いに行ったやつ？｣

『そうそう。色違いにしたの』

へえ、いいじゃん。なんて言いながらさりげなく荷物を持ってくれる倫

『いいよ、』

｢部活じゃないんだし、こんくらいいいから｣

『さすがお兄ちゃん』


｢お、おいお前らなんやその余裕
Aが浴衣って知ってたんか？｣

｢おん｣

｢言えや！｣

｢なんでそんなんいちいち言わなあかんねん｣

｢これやから1組はっ！｣



｢こいつら無視して先行こか｣

｢賛成｣

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