淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

・ ページ15

｢なーなーアラン君｣

｢なんや｣

｢小野妹子ってな、妹子やのに男やねんて！｣

｢へえ｣



｢アラン君アラン君｣

｢…なに？｣

｢あんな、中国のキョーサントウはな、毛沢東(もうたくとう)が指導者やったんやって｣

｢…はあ｣


ニコニコと嬉しそうに知識をひけらかす双子に

怒るに怒れず、微妙な顔を浮かべているアランさん


｢アラン君聞いてや、
サムの奴こんなドヤ顔で言うてるけどな

最初【けざわひがし】って呼んでたんやで｣

ぷぷぷーっと笑う侑を睨みつけた治は

｢あ゛ぁ!?

ツムやって小野妹子のこと女やと思っとっただけやなくて
世界三大美女の1人やとか言うとったやんけ！｣

言葉を詰まらせる侑に
アランさん含めた3年生が吹き出す

｢侑くんはおじさんがお好みやったんですねぇ〜｣

｢やんのかサム！｣

｢やってみろやアホ｣

2人が殴りこもうと近付いた瞬間

｢お前らそれ本気で言うてんのとちゃうやろな？｣


冷たい声に、2人がピタリと動きを止める

｢は、はは。もちろん小粋なジョークに決まっとるやないですか！｣

双子は拳をパッと開いて肩を組みながら笑顔を浮かべる

｢ほんならええけど｣



呆れながらそんな様子を見守っていると

｢苦労すんなぁ、Aも｣

｢あいつらの面倒見すぎて自分のおろそかにならんように程々にな｣


赤木さんや大耳さんも苦笑い


｢侑とか、ほんまに手ぇかかるやろ｣

『そうでも無いですよ』

｢｢？｣｣

『侑って多分元々の頭がすごくいいと言うか
頭の回転が早いんです。

だから、少し教えたらすぐ理解出来るし
基礎を教えたら応用も1人で解けます』

｢えぇ。めっちゃ意外やねんけど｣

｢確かにプレー見てる限りではあいつめちゃくちゃ頭ええしな｣

｢センスとか直感でやっとんのかと思ってたけど、
それを瞬時に選択出来とる時点で頭ええってことか｣


『ただ反復しないから一時記憶で消えちゃう…というか
本人に覚える気がないからでしょうけど』

｢あー、それはあるな｣

｢侑、バレーボール以外の事
脳に置いとく意味ないと思ってそうやもんな｣


誰もが認めるバレー馬鹿




飛雄も同じ

バレーの細かいルールやサインは一瞬で覚えることが出来るのに

公式や英単語1つ覚えるのは苦手

彼らの中心はバレーボールで

だから、バレーの出来ない私に
飛雄があそこまでの興味や執着を見せたことに驚いた

高校バレーという繋がりが終わった時

その先の未来で

侑と私は
どうなっているんだろう

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す