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〜side Atsumu
移動教室では
出席番号順やから、前にAちゃんが座る
(髪、短い…)
バッサリと切ってきた日には
驚きと同時に、少しの罪悪感もあった
夏休み前
高い位置で綺麗にひとつにまとめられた髪が彼女の動きに合わせて揺れる
それを無意識に目で追ってまう
「A、髪サラサラやな」
なんの気なしにサムが呟いたのが
何故かむしゃくしゃして
(そんなん、俺の方が前から__)
いい匂いも、するし
思わず顔を近づけ前に乗り出した時
プリントを回そうとした彼女が急に振り返り
髪の毛の束が俺の顔面に直撃する
「へぶっ!?」
『ごめん』
「…なにすんねん！このアホテール！」
『あ、アホテール？』
「邪魔やねん！ゆらゆら視界入りよって
気が散るんじゃボケ！」
君の髪の毛に気を取られてました、なんて
恥ずかしいのを誤魔化そうと口から飛び出した言葉
次の日、肩にもつかないくらい短くなった彼女の髪に、心が傷んだ
俺がAちゃんを苦手やった理由の1つ
今まで、誰に何を言うても
それで誰かが泣いたとしても
罪悪感とかこんな気持ちになることなかったのに
なんで、
「変な顔してどうしたん、ツム」
「別に」
「A、俺ロングのが好きやったな」
「…俺はどっちでも。興味ないし」
「ふーん」
多分、俺は
(揺れる、君の髪が好きやった)
目の前には、あの日より少し伸びた髪が結われとって
ちょん、と出た髪に触れる
『なに？』
驚いたように振り向く彼女は
「髪、もう伸ばさへんの？」
『侑が邪魔って言ったんでしょ、』
と呆れ顔で言う
柔らかい髪に触れながら
「言うたけど、やっぱ長い方がええ…」
『なにそれ』
「切らせるつもりやなかったもん、」
子供か。って自分でも思う
目を合わせられず、頬を膨らませる俺に
『昔はずっと短かったんだよ
だから短いのも好きだし楽なの』
なんてぶっきらぼうに言うたくせに
『でも侑がそう言うならまた伸ばしてみようかな』
なんで、“勝手”やって怒らんねん
なんで、“人でなし”って罵らんの？
彼女の上機嫌の理由が分かったのはその日の部活の後
いつも通り練習が終わると、ズラリとおにぎりが並べられていた
『保護者会やOBの方からの寄付金で、お米と安く譲って頂いた炊飯器を買いました！
練習後、夕食を取るまでの間の吸収のいい時間に捕食を取り入れるといいと思って監督にも相談して用意させて頂きました』
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作者名：りな∞
| 作成日時：2023年11月6日 1時
