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ページ6

〜side Atsumu

追いかけたはええけど

見つけたところで何が出来るわけでもなく

気付かれないようにサムと買ったキツネの面で顔を隠して

近すぎず遠すぎずの距離のまま、ただ後に続く。

前を向かずに歩いているガラの悪い集団が彼女とぶつかりそうになって


思わず手を引いてもうた

『…宮、くん?』

目を丸くする彼女の瞳を見つめ返すことは出来んくて


「人混みなんやからぼーっとしてたら危ないやろ」


(こんなこと言いたいんやなくて、)




「サム達が…あんたが元気ないって言うとった」

彼女は驚いたように俺の顔を見上げて


「俺が、嫌なこと言うたからなん?」


ぶんぶんと大きく首を振った

「…すまん」

用意していた言い訳も

謝罪も上手く言葉に出来ひんくて

一言だけがぽつりと飛び出した


今更許して欲しいなんて

傲慢で身勝手やって分かってんのに



君が今までのことなんてなかったかのように笑うから




思わず掴んだ腕は


思っとったよりも細っこくて、柔くて

こんな腕でいつもあの本数のボトル持って走り回ってんのか、とか


なんて言い表したらええのか分からへん

俺の世界(バレー)の中に、女が入ってきたのは初めてのことで

やからこんなに戸惑うんやろか


「あんさ、」

『うん?』

「…いや、なんでもない」

『気になるんだけど』

「これ、やる」

無理やりキツネの面をAちゃんに被せる

不思議そうな顔をしながらも仮面はつけたまま

「なんでツムの面つけとんの?」

『貰った』

「どうせ買ったはいいけどよく考えたら要らないから押し付けただけでしょ」

「ゴミ処理にAを利用すんな」

「散々な言いようやな君たち」

角名と銀の言葉なんて気にもしていないように


「Aとおそろいや」

『ほんとだ』

「【稲荷崎】やからな」

『お稲荷さんだね』


手で狐を作ってニコニコ話すサムとAちゃんの間には

いつも優しい空気が流れる


サムは食いもんでもなんでもそうや

気に入るとすぐ分かる

そればっか食うようになるし

1度気に入ったもんは、人に取られるのを嫌がる

・・・

「なあ、北川第一って知っとる?」

「どこやっけ?それ」

「宮城」

「あぁ、全国候補やった中学か
なんで宮城の学校なんて気にしとるん」

銀が不思議そうに首を傾げる

「宮城って言えばAの地元やな」

声のかけ方が分からず、彼女を目で追っていたあの日

新聞の切り抜きに目を落とす表情が__




【北川第一惜しくも敗れる】

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作者名:りな∞ | 作成日時:2023年11月6日 1時

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