【バレンタインの稲荷たち】 ページ45
「そろそろやな！」
『なにが？』
2月の頭、お弁当を食べ終えた侑が笑顔を浮かべて言った
「【ば】で始まる楽しみなもんや！」
「晩飯？」
『どうしたの、侑まで治みたいなこといって
お弁当足りなかったの？』
「ちゃうわ！俺をこのクソブタと一緒にすんなや！」
「誰がクソブタや」
「ちゃうやんか
ほら、2月でバのつくもん言うたら…」
「Aバレンタインなんかくれんの？」
「サムゥ!!」
『うん。いつもお世話になってるコーチ達含めて部活分は用意しようと思ってる』
「!!」
「よっしゃ！何くれるん？」
『希望ある？
なるべく平等にみんなで分けられる物がベストだと思ってるんだけど』
「手作りちゃうん？」
『はい？』
「俺、手作りがええねんけど」
『…なんで？』
「せっかくのバレンタインやし。手作りチョコレート貰いたいやんか」
あかん？と小首を傾げる治
『治は手作りだって沢山貰うでしょ
一気に食べすぎたら良くないから既製品の方が良くない？
長持ちするし』
「Aにもろたもんは、その日に食べるし
他の子からの手作りは受け取らんもん」
『え、なんで？』
「昔、チョコの中に変なもん入れられてから手作りは受け取らんようにしてんねん」
ため息をつく侑と、何かを思い出したように青ざめる治
『モテるのも大変なんだね』
「ちゅうわけやから、Aのがええ」
『私のは食べれるの？』
「当たり前やん
いつもAのおにぎり食うてんねんから」
『…好き嫌いあるだろうし、考えとく』
・
・
・
先生から呼び出され席を外していた角名
『倫』
「ん？」
『倫ってチョコ食べれるよね』
「うん？」
『じゃあ、手作りは？』
「なんで？」
『バレンタインにチョコ手作りしようか考えてて
もし嫌なら普通に買ったのを…』
「食える
手作り、食える」
『そう。ありがとう』
「なんで、そんなの急に…」
『治から手作りがいいっていうリクエストがあって』
「治？」
『バレー部の中で手作りがダメな人がいたら対応を考えようと思ってるの
あとは先輩達にも確認しないと…』
「あーね」
『ありがとう、参考になった』
「侑はなんて？」
『1人だけみんなと違うのは嫌だから治に手作りするなら自分にも手作りをよこせって』
「はは、アイツらしいわ」
角名は双子を思い浮かべて笑いながら
「楽しみにしてる」
と言った
稲荷崎初めてのバレンタイン
女子マネのチョコに選手皆大喜びだったとさ
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作者名：りな∞
| 作成日時：2023年11月6日 1時
