検索窓
今日:148 hit、昨日:165 hit、合計:120,467 hit

ページ44

稲荷崎に戻ってきて、最後のミーティング

3年生は笑って引退した


戻ってきている荷物を簡単に片付けていると

1列に並んだ3年生が体育館に向かってお辞儀をした

「「「ありがとうございました!!」」」



勝利にこだわる、挑戦者の稲荷崎

その中でも礼儀を重んじる優しい先輩たち


『…、』

中学の時は、先輩の引退の時もこんな気持ちにならなかったのに


言葉に表せない気持ちに心臓がぎゅっと痛くなる


明日からこの人たちはいない


「A
1年間、ほんまにありがとうな」

「俺らの時は1年が雑用やったからさ、Aがどんだけ頑張ってくれとるかも分かってるし、

有り難さも身に染みて感じとるんよ」

「初めは女の子がこんな男臭いガチガチの体育会系のマネージャーなんて大丈夫なんか、って思うとったけどAでよかったわ」


「短い間やったけど、世話になったな」

体育館へ向けた挨拶と同じように

ふたつも年下の私に、頭を下げる先輩たち


『わ、私の方こそ…
本当に至らぬことばかりで、ご迷惑も沢山お掛けして…、』

「やから、かたいっちゅーねん!」

先輩たちはからっと笑って


「俺らは引退するけど、あいつらのこと頼むな」

「もう選手ちゃうねんから、迷惑とか考えずに甘えてええからな」

「俺らにとって初めてで、唯一の後輩マネさんやもん
先輩にもええかっこさせてや〜」


『…はいっ!』



「俺らもう少し体育館おるから適当なとこでAも帰り。
疲れてるやろ」

多分、今からは

3年生だけの時間


『はい』


大体の荷降ろしを終えて


『あの、』

「うん?」


『1年間、本当にありがとうございました
…先輩達がいてくれて良かったです。

えと、これからも頑張ってください』


こういう時、なんて言うのが正解は分からなくて

おそるおそる顔をあげると


先輩たちは

目を丸くしたり

口角を上げて微笑んだり

涙ぐんだり


様々な表情で


だけど最後には、嬉しそうに笑った










先輩たちが引退しても

私たちの毎日は変わらずにやってくる


「新キャプテン、誰になるやろな」

「アランくんやったりして」

「部崩壊すんで」


お前ら(宮兄弟)がいなきゃ立派な主将が務まったやろうな」

「あえてのダークホース、赤木さんやったりして」


前を歩く双子と銀の会話に、倫はさほど興味が無さそうにあくびをした


「Aは誰だと思う?」

『…北さん』

倫は細い目を少し見開いて

「まぁ、そうだね」

と頷いた

【バレンタインの稲荷たち】→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (81 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
279人がお気に入り
設定タグ:北信介 , 宮侑 , 宮治
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:りな∞ | 作成日時:2023年11月6日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。