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ボトルを流し終わって荷物整理をしていると
ボルドーのジャージが目に入り、後を追う
目の前には180を超える大きな体を丸めた金髪の物体
『侑』
「…ボトルちゃんと返した」
『うん、ありがとう』
「アイシングもいらん…」
『うん、分かってる』
「じゃあ何しに来たん」
『…侑を探しに』
「なんで」
なんで、と言われても
拗ねて姿を消すあなたを回収にきた
けど、多分そういうことじゃなくて
『何となく』
「なんやそれ
どうせ戻ってこいって呼びに来たんやろ」
文句を垂れながら小さい子のように体育座りで顔を埋める姿は子供みたいで
『決勝見てくしまだ戻らなくていいんじゃない』
「…連れ戻しに来たんちゃうん」
『違うよ』
「ふうん、」
顔を上げた侑の目は真っ赤になっていて
泣いたのかな、なんて思う
「…今日、むっちゃ調子良かってん」
『うん』
「ボールの収まる感じとか、ドンピシャで
サムとの速攻もハマっとった」
『…そうだったね』
「やから、俺には分かっててん
サムのトスがどこに来るか、ドンピシャで当てられる自信もあった」
『うん』
「俺がサムならあの場で間違いなく俺にトスをあげた
あいつがやった事は綺麗事で、妥協や
俺らは仲良しごっこやりに来てるんちゃうし
勝つためにおるんやろ」
『…うん』
「なぁ、俺って間違ってんの?」
『え?』
俺は間違ってないと言い切ると思っていた侑からの問いかけに驚く
「今まで散々人でなしとか言われてきたけど…
俺は間違うてるん?
アイツらが正しいん?
やから嫌われんの?」
『…』
「それが正解やっていうんなら
俺はずっと間違ったままでええ
…そんなんバレーちゃうわ」
確かに侑は口は悪いし横暴だし、人としてどうかと思うところもあるけど
全てを犠牲にしてでも貫きたい【
『別に間違ってるとは思わない
侑の選択も、治の選択も』
「…はぁ?」
「侑にとって治の選択が間違いだったように、治の中では侑の選択は間違いで、あれが正解だったってだけでしょ?」
「…ムズい」
『正解も間違いもないんじゃない?ってこと
侑は侑のままでいいよ』
「…?まぁ変える気ないけど」
侑にも
いつかきっと、分かる日がくる
『決勝見に行くでしょ?』
「…おん」
『あと、私は好きだよ。侑のこと』
「は!?」
『皆、侑のことちゃんと好きだよ』
侑は何も言わずそっぽを向いて、髪をクシャ、と掴んだ
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作者名:りな∞ | 作成日時:2023年11月6日 1時