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「ありがとぉ」
おにぎりを受け取った治は嬉しそうに頬を緩めた
「泣く?ハンカチ…ないな、タオル使うか?」
『泣かないよ。大丈夫』
治はこく、と頷いて
『部活であったらいいなぁって思うもの何かある?』
「飯」
『以外で』
「えー、…まぁ、言い出したら色々あるけど飯もホンマやで
練習の後って腹減るしなぁ」
『なるほど、ありがとう』
「?」
・・・
いつの間にか蝉の鳴き声は止んで
夏特有のじめっとした空気のかわりに
心地いい風が髪を揺らす
「夜になるとちょっと涼しいね」
『そうだね』
「夏も終わりかー」
チューペットを咥えている倫が呟く
『冬になっても食べるの?』
「食べるけど、帰り道歩きながらはぼちぼちかもね」
「そやなぁ、寒なってきたら中華まんが美味なるからな」
食べ終わったアイスの棒をガジガジと噛みながら呟くのは治
家も近く、方向だって違うこの人たちが
「コンビニ行きたいから」
とついてくるのにも慣れてきた
「お前は食うことばっかやな」
呆れたような侑の言葉に
「俺、秋好きやねん
美味いもん沢山あるし寒すぎひんし」
治は悪びれもなく返す
「治の食いしん坊は生粋やな」
銀も笑って
前を歩く3人の影を見つめる
(なんて、贅沢な眺めだろう)
「Aは?どの季節が好きなの?」
隣を歩く倫が目をこちらに向ける
『…、考えたことないかも』
ええー?と3人も振り返って声をあげる
『春は好きだけど花粉が辛いし、夏も好きだけど暑すぎるのは得意じゃないし…
秋は紅葉が綺麗だけど特別好きかって言われると分からないし
冬もイベント多くて楽しいけど寒いのは苦手だし…』
「いや長いわ!
北さんの説教かと思たわ!」
「例え分かり辛」
「黙っとれサム」
侑がなんでやねん、のチョップをエアで私に振り下ろす
「んなもん複雑に考えんでええねん!
こいつみたいに飯が美味いから秋が好き、とか
クリスマスと正月あるから冬が好き、とか
それでええやん!」
「Aはなんでも考えすぎや!」
「銀は人のこと言えへんやろ」
「ぅ…」
「でも春と夏は好きって言えたじゃん
それはなんか理由あるの?」
『…楽しかったから』
皆がきょとん、として私の顔を見た
『みんなと過ごす今年の春と夏が…
凄く楽しくて
好きだなって、』
「…おぉ」
銀と侑は嬉しそうに目を開いて
倫はふっと笑う
「じゃあ、これから秋も冬も好きになるな」
と治
「やってこれからの四季も一緒におるやん」
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作者名:りな∞ | 作成日時:2023年11月6日 1時